マルセイユタロット徹底解剖

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マルセイユタロット『徹底解剖』という記事のタイトルのアイキャッチ

こんにちは。

ご覧いただきありがとうございます。

初めて『タロットの世界』にお越しくださっている方もいらっしゃるかも知れません。

当サイトは、今現在、Arthur Edward Waite(アーサー・エドワード・ウェイト)著『The Pictorial Key to the Tarot』の翻訳をしております(たった今2025年11月現在はお休みをいただいております)。

翻訳と言っても、『私たち日本人にとってわかりやすい訳』を目指した、かなり意訳に近い形のものになりますが、おかげさまで前々回、ようやく一つの節目を迎えることができました。

まだまだ冒頭と言っても差し支えのないくらい最初の方ではありますが、なんとかしがみ付きながら一文一文読み解いています。

さて、現代のタロットの多くは、ウェイト=スミスタロットが主流、あるいは基盤となっているものがほとんどだと思いますが、みなさんは何故マルセイユタロットに辿り着いたのでしょうか。

初めて当サイトにお越しいただいた方は驚かれてしまうかも知れませんが、実のところ、私は〝占い〟そのものにはあまり興味がありません。

ですが、子供の頃から何故か『タロット』は好きなんですね。

「なんかかっこいい」じゃないですか、タロットって。

そのため、以前から「一応、マルセイユタロットも一種類くらいは持っておくかぁ~♪」ということで、ニコラ・コンヴェル版(正確には復刻版であるグリモ―版です)だけを購入していました。

ニコラ・コンヴェル版タロット〝手品師(Le Bateleur)〟のカード。人物が卓上のアイテムとともに描かれ、伝統的なマルセイユ版の様式が反映されたデザイン。
ニコラ・コンヴェル版(グリモ―版)「奇術師」
© France Cartes – Grimaud

ですがやはり、私はそのニコラ・コンヴェル版を占いやリーディングといったことに使うことはありませんで、たまにカードを取り出しては「やっぱり変な絵だな~♪」と眺めているくらいでした。

ちなみに、マルセイユタロットは、「絵(象徴)が少ない」「読みにくい」と言われることがあるそうなのですが、みなさんはいかがですか?

私は、私が持っているニコラ・コンヴェル版は、当時の木版画での印刷を再現したような色合いや風合いに「温かみがあるなぁ~」と感じられて、嫌いではありません。

確かに現代では、それはそれは美しいタロットが物凄く多く存在しますが、当時の限られた色だけを使った、手作業で刷られたマルセイユタロットを再現したものも、それはそれで温かみのような、人間味のようなものが感じられると思います。

ここで、「マルセイユタロットの〝意味〟を知りたい」と思って訪れてくださった方には申し訳ないのですが、当記事ではマルセイユタロットの意味付けや、占い的な解釈については、ほとんど取り上げることがないということは、先にお伝えしておかなければなりません。

本来、マルセイユタロットは占いのためのものではなく、トランプのようなカードゲームとして誕生したという歴史があります。

そのため、当サイトでは、今広く知れ渡っている〝マルセイユタロットの意味(占い方等含む)〟とされているものは、後世の人々によって付け加えられたものに過ぎないという考えを持っています。

それらを軽んじたり、否定するつもりではないのですが、当記事はマルセイユタロットそのものに焦点を当て、インターネットなどで見られる様々な情報を自分なりに整理、統合、そして出来る限りわかりやすくまとめたものになります。

もし、この記事が、マルセイユタロットに興味を持って訪ねてきてくださった方にとって、少しでも参考になったり、何かしら収穫のようなものになれば嬉しく思います。

元々「今あるタロットの土台と言っても過言ではないウェイト=スミスタロットを理解するところから始めよう!!」と始めた『The Pictorial Key to the Tarot』の翻訳でしたが、読み進めていくと、どうやら次のパート(§2=セクション2)は当時の『マルセイユタロット』の解釈がメインで描かれていることがわかりました(少しだけ先読みしました)。

翻訳を始める前から「いずれは全部知ることになるんだろうな」ということは決まっていたので、たまたまとは言え、こうしてこれから『マルセイユタロット』が取り上げられる『The Pictorial Key to the Tarot』を読み進めていくのと同時に、マルセイユタロットのことも知れるというのは、偶然とは言え、これは私にとっても思ってもみなかった大収穫なのです。

§2は、当時のマルセイユタロットの解釈について取り上げられている(ウェイトが一つひとつに物申している感じ)のがメインですが、「どうせなら、この際マルセイユタロットに関する様々な情報をまとめてしまってみてはどうか?」と考え、この記事を書くことに至りました。

かなり膨大な量になりますが、細かく目次を振っております。

全部を読んでいただけましたら一番嬉しいですが、気になるところだけでも、どうか楽しんでご覧いただければと思います。

一般的にタロットの1番は「魔術師」のカードですが、フランス語で〝 Le Bateleur〟を調べてみますと「大道芸人/手品師/魔術師/奇術師」など訳は様々です。実際に一つずつ調べていくと〝魔術師=magicien〟〝奇術師=illusionniste〟とも出てきます。
恐らく〝Le Bateleur=魔術師〟となるのは、タロットの普及と共にそうされてきたのだと思います。ですが「どれも意味が違うのに同じ単語なわけがないじゃないか!」というのが当管理人の考えです。
また「ジャグラー」と訳されることもあるのですが、どう見てもジャグリングをするような雰囲気には見えません(ボールらしきものあるのですが…)。
そこで、当サイトでは当記事以降、マルセイユタロットの1番を「奇術師」と呼ぶことに統一します。よろしくお願いいたします。

第1章:マルセイユタロットとは何なのか

マルセイユタロットの定義と簡単な説明

現在は「タロット=占いの道具」として広く知れ渡っていますが、その起源は15世紀イタリアに遡り、『トリオンフィ(勝利/切り札)』と呼ばれるカードゲームとして誕生しました(諸説いろいろあるようですが、当記事ではこの呼び方を用います)。

ここではあまり深くは触れませんが、マルセイユタロットよりも更に古くにある『ヴィスコンティタロット』が現存する最古のタロットとして挙げられます。 ヴィスコンティタロットは、当時の貴族が画家に描かせた豪華なカードのセットであり、芸術品としての性質も強く持っていました。

画像の通り、大きさにも随分と違いがあります。

タロットは後にフランスへと伝わり、『マルセイユタロット』として定着していきます。

この記事では、カード1枚1枚の意味を探るのではなく、その構造や、構造から見えてくる語りを見出すという視点で、マルセイユタロットを見ていきたいと思います。

他のタロットとの違い

マルセイユタロットは、他の多くのタロットと比べて、絵柄が簡素で象徴が少なく、物語的な描写はほとんどありません。例えばウェイト=スミスタロットは、各カードに物語性のあるシーンが描かれており、特定の解釈を促すような設計になっていますが、それに対しマルセイユタロットは、抽象度が高く、構造そのものが語りの起点になるようです。

マルセイユタロットとウェイト=スミスタロットのカップの6から10を並べて比較した画像。
上段:マルセイユタロット
下段:ウェイト=スミスタロット
左から「カップの6~10」、違いが明確です。

一般的に「マルセイユタロットは読みにくい」と言われることもあるようですが、それは絵柄が簡素で象徴が少ないため、意味が読み取りづらいという印象から来ているように思えます。

しかし、そもそもマルセイユタロットはカードゲームとして生まれたものであるため、意味を読ませるために設計されたものではないのではないか、というのが当サイトの考えでもあります。

そのため、当サイトでは、絵柄や象徴の少なさは解釈の幅(余地)ではないかという考えで――それがマルセイユタロットの特徴であると捉えています。

第2章:歴史的背景と起源

15世紀イタリアでの誕生、『トリオンフィ』というゲーム

マルセイユタロットの起源となるカードゲーム『トリオンフィ』は、イタリアの貴族階級の間で楽しまれていました。『トリオンフィ』としてのカードの構成は現在のタロットの基礎ともなっています。大アルカナと小アルカナに分かれ、小アルカナは「棒、杯、剣、金貨」の4つのスートに分かれています。さらに、小アルカナには人物カード(コートカード)として「王、女王、騎士、ペイジ(従者)」が含まれており、これらの構成やルールは後のマルセイユタロットに影響を与えました。ゲームは『トリックテイキング』という世界的に有名なカードゲームのルールが採用されているようで、プレイヤーが順番にカードを出し合い、その中で最も強いカードを出した人がその回の勝者となるシンプルな仕組みでした。当時は占い用ではなく、あくまで娯楽用のカードとして設計されていたことが特徴です。

マルセイユタロットの金貨のペイジ、騎士、女王、王を並べた比較画像。
マルセイユタロット
左から「金貨の従者、騎士、女王、王」

余談ですが、いわゆる「Page(ペイジ)」は〝従者〟を英語で表した呼び方で、フランス語では「Valet(ヴァレット)」と言います。

フランスへの伝播とマルセイユ地方での定着

15世紀、イタリアのミラノで生まれた現存する最古のタロット『ヴィスコンティタロット』は、16世紀になるとフランスへ伝わります。特にマルセイユ地方では、木版画を用いたシンプルで力強い線画と落ち着いた色調が組み合わさった独特のデザインが確立され、現在に至るまで長く愛され続けています。

ミラノからマルセイユまではどのくらいの距離があるのか気になったので調べてみました(両方の位置関係を分かりやすくするため、地図はトリノを中心にしています)。

ミラノからマルセイユ辺りまで現在なら車で5~6時間、電車でも7~9時間ほどで行き来できる距離です。恐らく当時ではもう少し時間がかかったと考えられますが、決して越えられない距離ではなく(歩きでも5日ほどだそうです)、感覚的には東京―大阪間より少し遠いというイメージです。

占いへの転用と書籍化

現在、多くのタロットカードはウェイト=スミスタロットを基盤として制作されていますが、それ以前は、マルセイユタロットが一般的なタロットとして広く知られていました。 ヴィスコンティタロットが制作されたのは15世紀半ばですが、発見自体は20世紀頃のことであり、当時はまだ「タロット=マルセイユタロット」と言っても過言ではありませんでした。

18世紀に入ると、タロットは占いの道具としての側面が強まり、数多くの解説書や占術書が出版されました。19世紀になるとその流れが加速し、その中で意味付けされた象徴や解釈が、現在でも広く知れ渡っているようです。

年表形式で主要なタロットを整理

主要なタロットカードの歴史を年表形式で整理しました。
拡大してご覧いただけますので、宜しければぜひ参考にしてみてください。
※PCでは画像をクリックすると拡大表示されますが、スマートフォンでは指で広げていただいた方が見やすいです。

第3章:構造と特徴(他タロットとの違い)

現代の多くのタロットカードはウェイト=スミスタロットを基盤にしています。ここでは敢えてウェイト=スミスタロットを基準にして、その違いについて少し触れてみたいと思います。

ウェイト=スミスタロットの『魔術師(THE MAGICIAN)』と、マニコラ・コンヴェル版のマルセイユタロット『太陽(LE SOLEIL)』が並んでいる。
左:ウェイト=スミスタロット「魔術師」
右:マルセイユタロット「太陽」
(ニコラ・コンヴェル版〈グリモー版〉)

ウェイト=スミスタロットとの違い

ウェイト=スミスタロットは、19世紀末の秘教結社〝黄金の夜明け団〟の思想に影響を受けた Arthur Edward Waite(アーサー・エドワード・ウェイト)の解釈を基盤に作られました。カードのイラストは、ウェイトの指示を受けた Pamela Colman Smith(パメラ・コールマン・スミス)が描き、その芸術的感性によって象徴が視覚化されています。こうして豊富な象徴や描写が盛り込まれ、読む人に物語的な解釈を促すデッキとなりました。

Arthur Edward Waite
出典:Wikimedia Commons
Pamela Colman Smith
出典:Wikimedia Commons

一方でマルセイユタロットは、元々はカードゲームとして使われており、当初は大アルカナ、小アルカナ共に『占い的な意味』は存在しませんでした。大アルカナは数値的な序列しか持たず(数の大小で強さが決まっていたということです)、ゲーム内では〝切り札〟として扱われ、小アルカナはスートと数だけで描かれていました。占いにおける意味付けは18世紀以降の神秘主義者たちによって付与されました。

そのため、マルセイユタロットを占いに用いる際には、後世に付与されたスートや数の解釈、そして大アルカナの意味などを組み合わせながら、読み手が自ら解釈を見出していくことになります。そこにはウェイト=スミスタロットのような明確な物語は描かれておらず、「どう読むか」という自由さがあることになります。ある意味、この『自由さ』がシンプルでもあり、また複雑とも呼ばれる理由なのかも知れません。

絵柄と象徴

マルセイユタロットの多くは、木版画による力強い線とステンシルによって彩色された限られた色で構成されています。均一ではなく、彩色や刷り方の揺らぎが一枚一枚の個性を生み出し、同じ版でも異なる表情を見せます(現代のものは印刷によるためそうではありませんが)。そうした素朴さや違いも、またマルセイユタロットの魅力だと言えます。

1760年に制作された最古の版(梨の木)が現存しており、『camoin.com』というサイトで見ることができます。日本語にも対応していますので、ぜひ当時の雰囲気を体感してみてください。
冒頭でご紹介したニコラ・コンヴェルは当時の王室お抱えの彫り師だった――など、こうしたあまり知られていない豆知識などを知ることもできとても面白いです。ぜひ覗いてみてください。

また、これまでさも当然のように「象徴」という言葉を用いてしまっていましたが、マルセイユタロットは元々カードゲームとして成立していたものですから、本来そこに占い的な意味での象徴は存在しなかったはずです。製作者による何らかの意図が込められていた可能性は否定できませんが、あくまでゲームの中での意味付けであり、占い的な〝象徴〟として読む見方は後世の人たちによるものです。
ですので、確かに現代的な視点から見れば「象徴が少ない」と感じることは自然なのですが、当時の完成形を基準とするなら、むしろそれは歴史的な事実とは異なり、少し偏った見え方とも言えるのかも知れません。

大アルカナ〝力〟と〝正義〟の順番が違う!?

18世紀頃以降の伝統的なマルセイユタロットと現代のタロットでは、大アルカナの「力」と「正義」のカードの順番が違います。マルセイユタロットでは Ⅷ=正義、Ⅺ=力ですが(Ⅷ=8、Ⅺ=11)、ウェイト=スミスタロット以降の現代のタロットの多くは Ⅷ=力、Ⅺ=正義という順番が主流となっています。これはどちらが正しいというわけではなく、歴史や人々の解釈の積み重ねによって生まれた違いだと言えます。つまり、複数の体系が存在し、それぞれの固有の意味や背景があるということです。

マルセイユタロットとウェイト=スミスタロットの正義と力のカードを並べて比較した画像。
上段:マルセイユタロット「Ⅷ=正義・Ⅺ=力」
下段:ウェイト=スミスタロット「Ⅷ=力・Ⅺ=正義」

本来のヴィスコンティタロットには、現在の大アルカナのような番号や名称は付いていなかったそうです。また、『現存する最古のタロット』と呼ばれているカーリー・イェール版には〝三美徳〟とされる「信仰・希望・慈悲」のカードが含まれており、マルセイユタロットや現代のタロットとは大アルカナの構成が少し異なります。

ヴィスコンティタロットの信仰・希望・慈悲の三美徳カードを並べた比較画像。
ヴィスコンティタロット
左から「信仰・希望・慈悲」

ちなみに、ヴィスコンティタロットにはまだ未発見のカードがあります。こちらの3種類は実在しているものですが、未発見のカードは「もし実在したら…」という想定で、後の制作者の方がデザインしたものになります。

第4章:マルセイユタロットの種類と特徴

実は、『マルセイユタロット』は一種類だけではありません。時代や地域ごとにいくつかの系統のマルセイユタロットが存在します。ここでは、その代表的なものを年代順に見ていきます。

ジャック・ヴィエヴィル(Jacques Viéville/1643〜1664年頃)

フランス、パリで制作された、マルセイユ系最古級のデッキ。ただし現代の『マルセイユタロット』の定義に含めて良いかはやや曖昧とされている。

  • 大アルカナの図像は、後の標準的なマルセイユタロットとは異なるものが存在する(例えば「悪魔」のカードには恐竜のような物体が描かれている)。
  • 一部のカードは左右や上下が反転している(版木の使い方によるものと考えられる)。
  • 「正統派」に含めるかどうかは議論があるものの、現在の『マルセイユタロット』が確立する以前の姿を伝える資料としても貴重なデッキである。

※日本語では情報が少ないので、ローマ字で「Jacques Vieville」と検索してみると良いかも知れません。また、フランス版のWikipedia『Tarot de Viéville』では実際の絵柄が確認できます。気になる方はぜひ見てみてください。


ジャン=ノブレ(Jean Noblet/1650年頃)

  • フランス、パリで制作された、現存する中で最古のマルセイユタロット。
  • 78枚全てが揃って残っているわけではない。
  • 現在の『マルセイユタロット』の原型とされる。
  • 一部のカードには、後のマルセイユタロットと異なる部分がある(例えば「皇帝」が右向きに描かれていたり)。
  • 『マルセイユタロット』の成立を考える上で欠かせない、最古の資料的価値を持つデッキ。

※「ジャン・ノブレ」と検索すると、線画が濃く、どちらかと言うとポップな印象の復刻版の画像が多く見られますが、オリジナルは木版画なので、実はそこまでは黒々とはしていません。また、復刻版には緑色が加えられているものもありますが、フランス国立図書館に所蔵されている実際のジャン・ノブレ版に緑は使われていません。これは恐らく後世の復元時に加えられた補色かなと考えられます。ぜひ下記のサイトで実際のジャン・ノブレ版をご覧ください(高画質のため読み込みに少し時間がかかるかも知れません)。

Gallicaではカードの両面を撮影した154枚の画像が公開されていますが、重複するものがあります。実際に確認してみると「カップの2~5」が重複しており、「剣の6~10」が未掲載でした。もしかすると、現代の復刻版に見られる「剣の6~10」は、後世の制作者によって補完されたものかも知れません。


ジャン・ドーダル(Jean Dodal/1701年頃)

  • フランス、リヨンで制作されたデッキ。
  • ジャン・ノブレの流れを受け継ぎつつ、人物やシンボルの配置や構図が整理されている。
  • 線や色彩が比較的安定し、後のニコラ・コンヴェル版に見られる「標準化されたマルセイユタロット」に近づいていく過程を示す。

有難いことに、こちらもフランス国立図書館に所蔵されており、ジャン・ノブレ版同様『Gallica』で全カードを高解像度で閲覧できます。実物は、ぱっと見には鉛筆と色鉛筆で描かれたような素朴な風合いがあり、ぜひ一度ご覧いただきたい資料です。


クロード・バーデル(Claude Burdel/1751年)

  • スイス、フリブールで制作。

制作地がフランスではないため、厳密には「マルセイユタロット」とは言えないかも知れませんが、後のニコラ・コンヴェル版に先行する標準化の典型例として重要視されており、研究者や愛好家の方たちからも〝貴重なデッキ〟とされているそうなので、当記事でも取り上げてみました。

  • 力強い線と素朴な印象が特徴。
  • 「マルセイユタロットの骨格」を感じさせるデッキで、復刻版も多い。

こちらは、『Gallica』のような実物を確認できる公的なサイトは見当たりませんでした。現状オンラインで出回っているものはいずれも復刻版だと思われますが、「Claude Burdel 1751」と検索すると画像は比較的多く見付かりましたので、興味のある方はぜひ検索してみてください。


ニコラ・コンヴェル(Nicolas Conver/1760年)

  • パリで制作され、最も広く普及したマルセイユタロット。
  • 後世の「標準形」となり、現代の復刻や研究の基盤に。
  • 線画や色彩が洗練され、象徴の配置も安定している。

残念ながら当時の実物そのものを見ることは難しいのですが(先ほどご紹介した『camoin.com』では「奇術師」のカードだけ閲覧可能)、『Gallica』にて1760年版のものを近代復刻した資料をご覧いただけます。

最初は「それってグリモー版と同じということ?」と思ったのですが、実際に見てみますと、手元のグリモー版よりも色の出方などに歴史を感じ、「あぁ、タロットって元はこんな風だったんだ」と成り立ちを体感できました。しかし、復刻の正確な年代の記載がないため、いつのものなのかは不明です。


グリモー版(Grimaud/1930年代〜)

  • ニコラ・コンヴェル版を基にフランスで大量流通。
  • 20世紀以降「マルセイユタロット」と言えば、この版を指すことも多い。
  • 印刷技術の進歩により、色彩が均一で現代的な仕上がり(あくまで現在流通しているマルセイユタロットの中での特徴です)。
左から『教皇(LE PAPE)』『戦車(LE CHARIOT)』『正義(LA JUSTICE)』『隠者(L'HERMITE)』『吊るされた男(LE PENDU)』が並ぶ、グリモー版マルセイユタロットの大アルカナ。管理人のお気に入りの5枚。
左から「教皇(LE PAPE)、戦車(LE CHARIOT)、正義(LA JUSTICE)、隠者(L'HERMITE)、吊るされた男(LE PENDU)」

なんとなくですが、特に私の好きな大アルカナを並べてみました。

私自身、現物を所持しているので、全カードを丸ごと撮影してお見せすることも可能なのですが、著作権等の観点に加え、当記事では雰囲気だけでもお伝えできればと考えており、また、実際に購入された方の手元に届いたときのドキドキ感を損なわないために少し控えめにしています。ご了承ください。


カモワン=ホドロフスキー版(Camoin-Jodorowsky/1997年)

  • フィリップ・カモワンとアレハンドロ・ホドロフスキーが、18世紀のニコラ・コンヴェル版を再構築、修復、復元。
  • 秘教的・象徴的な解釈を重視した現代的なマルセイユタロット。
  • 占い実践者や研究者の間で高い支持を得ている。

公式サイトでは、大アルカナ全カードと数枚の数札が閲覧可能です。

マルセイユタロットの生い立ち

ここで少しマルセイユタロットの生い立ちについて触れてみたいと思います。
実は、これまでご紹介してきたニコラ・コンヴェル版こと、つまり〝コンヴェル家〟とも言えるわけなのですが、このコンヴェル家とこちらのフィリップ・カモワンさんのご先祖(つまりカモワン家)は婚姻関係にありました。今からもう200年以上も前のことになりますが、1861年にジャン=バティスト・カモワンがコンヴェル家の子孫と結婚し、伝統はカモワン家に継承されました。当時、既にマルセイユ地方ではカードメーカーがこの二家しか残っておらず、1878年にはカモワン家だけを存続することにしたそうです。フィリップ・カモワンさんは事実上、マルセイユタロット最後の後継者なのです。

また、このフィリップ・カモワンさん。宗教やオカルト全般に精通しているだけでなく、なんと12ヶ国語も学んでいるそうです(ちなみにホドロフスキーさんは映画監督でもあるタロット占いの専門家なのだとか)。そのためか、フランスのサイトでありながら、翻訳機能を使わずとも日本語で丁寧に情報が記されています。本場の方からこのような資料を提供していただけるのは本当に有難いことです(ありがとうございます!)。


補足:地域ごとに派生したマルセイユタロット

今回『マルセイユタロット』について調べていくと、そこには「広い範囲ではマルセイユタロットとは呼ばないが、狭い範囲ではマルセイユタロット系として扱われる」とされる、マルセイユタロットの影響を受け各地で派生したタロットが存在することがわかりました(少しややこしいかも知れませんが、当管理人の中では〝ご当地タロット〟というような理解です)。
せっかくですので、こちらに〝補足〟として取り上げておきたいと思います。

  • スペイン系
    フランスから伝わった版木や構成を基にスペイン国内で制作されたカード。色彩が鮮やかで人物の描写に独自のスタイルが見られます。現代では「スペイン版マルセイユタロット」として復刻されることがあるそうです。
  • ベルギー系
    ベルギーでもマルセイユタロットを基盤にしたカードが制作されました。線画や色彩に地域的特徴が反映され、従来のマルセイユタロットとは異なる雰囲気を持ちます。実物は博物館やコレクター所蔵品で確認されることが多く、一般流通は限られているようです。

どちらも復刻版が販売されていますが、スペイン版の方は国内では入手が困難なようです。念のため、どちらも代表的なデッキの名前だけでも記載しておきます。

代表的なデッキ

Tarot de Marseille Fournier(スペイン系)
多くはありませんが日本語で〝マルセイユタロット スペイン フルニエ〟と検索すると画像が見られます。基盤はマルセイユタロットですが、随分とカラフルになった印象で私は好きでした。アメリカ版Amazonでは、2025年11月時点でもミニサイズのものが20ドルほどで販売されているのが確認できました。

Vandenborre Tarot(ベルギー系)
こちら、恐らく18世紀末に制作されたものの復刻版ですが、全部ではありませんが高画質で見られるサイトを見付けました。

「ベルギー系」とお伝えしましたが、このタロットを紹介する際、製作者であるフランソワ・ジャン・ヴァンデボーレさん(1762-1803)の出身であるベルギーのブリュッセルをはじめ、他にも「イタリア、フランス、スイス」と様々な国名が挙げられることから、専門家の中では『ハイブリッドなタロット』と呼ばれていました。
現代では一般的に「愚者」は0番ですが、Vandenborre Tarotでは22番に割り当てられていたりします。また5番の「教皇ないし司祭」のカードが「BACUS(現在のBACCHUS=バッカス)」となっていてお酒の神様になっていたり。更に、吊るされた男が吊られておらず、立っている状態になっていたり、個人的には面白い箇所が多く見られました。

また、こちらのサイトには1000を超える記事があり、そのほとんどがタロットに関するものです。かなり古いカードを取り上げていたり、高画質な画像を多く掲載していたり、日本ではまだまだ知られていないであろう世界中のタロットを知ることができるので、ぜひ見てみてください。

余談ですが、カードに描かれている表情のいくつかが、子供の頃に遊んだFC『サラダの国のトマト姫』というソフトに登場する唐辛子のキャラクターに似ていて、つい子供の頃を思い出してしまいました(本当に余談で申し訳ないですが、わかってくださる方がいたらとても嬉しいです)。

もし、この章で取り上げたタロットを実際にお持ちで「お写真等、当記事に掲載しても構わないよ」という方がいらっしゃいましたら、ご一報ください!よろしくお願いいたします。▶▶ こちら

第5章:カードゲームとしてのマルセイユタロット

今、この記事をご覧いただいている多くの方が「マルセイユタロットとは何?」という思いでいらしてくださっているのではないでしょうか。そのため、実際のカードゲームとしての側面にはあまり興味のない方もいらっしゃるかも知れませんが、「より深くマルセイユタロットを知りたい」という私自身の思いから、カードゲームとしての『マルセイユタロット』にも少し触れてみたいと思います。

では「早速!!」と言いたいところなのですが…実は「これ」と言った明確なルール(当時の伝統的なルール)が見当たらないのが現状なのです。がっかりさせてしまっていたらすみません。

日本語のサイトでも「元々はカードゲームだったタロットを、当時の遊び方で実際に遊んでみた」というような内容でルールや遊び方が書かれたサイトが存在しますが、どれも微妙に違うため、当サイトとしても「これが正解」と断定することが難しいと判断しました。

ですが、実は現在も『カードゲームとしてのタロットが存在する』ということはご存知でしょうか。
このカードゲームは『French Tarot』という正式名称があり、競技として公式のルールが定められているほどです。

また、この『French Tarot』で実際に使われるタロットカードをご覧になったことはありますか?
一見「え?トランプ?」と見間違えてしまうようなデッキなのです。実際の公式のルールでも、スートは「スペード、ハート、クラブ、ダイヤ」となっており、数札はまるで現在のトランプのようでした。更には、現代の一般的なタロットの数札は10までですが、「トランプのクイーンかな?」と思えてしまうカードもあったり、なんとも不思議で独特なデッキでした。

参考になりそうな画像が見付からず、この競技用のタロットデッキを購入すること自体も国内では難しそうでしたので(フランスやアメリカなどでは普通に販売されています)アメリカ版のAmazonになりますが、実際の競技用のタロットの商品ページのリンクを置いておきます。カードの絵柄全部を見ることはできませんが、雰囲気だけでも味わいたいという方はぜひ見てみてください。

フランスが中心になっているそうですが、チェスほど世界的なものではないかも知れませんが、日本で言うところの『花札』や『百人一首』に近しい存在なのかなと感じられました。

ここで念のため、まだあまりタロットに触れたことがないという方で、どういうわけか当記事に辿り着いてくださった方のために補足としてお伝えしておきたいことがあります。それは、このページだけを見ると、まるで「マルセイユタロットがそもそもカードゲームだった」かのように感じられるかも知れないという点についてです。それは間違いではないのですが、あくまでこのページでは『マルセイユタロット』を取り上げているためにそのような表現をしているに過ぎません。つまり、マルセイユタロットに限定されるのではなく、『タロットそのものが元々はカードゲームだった』というのが本質的なところです。その点ご理解いただけますと幸いです。

こうして、現代には〝公式〟の競技として、実際にタロットを使ったカードゲームが存在します。つまり、誤解を恐れずに言うのなら、本来であればこれこそがカードゲームとして生まれたタロットのそもそもの行き着く姿だったのではないだろうか――そんな気もしてしまいます。

この公式のルールはフランスの公式連盟=FFT(Fédération Française de Tarot)が定義しているものです。このことからも〝占い〟としてのタロットとは完全に分岐していることがわかります。特にフランスでは、現在でも家庭やカフェで遊ばれているそうで、今もなお〝生きたカードゲーム文化〟として根付いていることが伺えます。

念のため、『French Tarot』の公式のルールブックを共有しておきます。

しかしながら、この現在の〝公式〟とされているルールと、当時の遊び方は異なるものだろう、というのが当サイトの見解です。先ほどもお伝えしました通り、そもそものカードの構成も、恐らく当時とは違っていた可能性が高いと考えられるからです。とは言え、カードゲームとしてのタロットの歴史を辿ってみるのも、占いとしてのタロット史には出てこないこともあり、それはそれでまた新たな発見があり楽しめました(諸説いろいろあるようですが、何百年も前のことですので、これを正解と鵜呑みにせずぜひとも「そういうこともあるのかも知れないなぁ~」という程度に受け止めていただけると幸いです)。

英語版のWikipediaになりますが『歴史』がおすすめです。

また、公式のルールはフランス語のもののみで、フランス語のPDFだからなのかGoogle Chromeの翻訳機能では日本語にできませんでした。しかし、非公式にはなりますが第三者の方が英語に訳したものがあり、そちらは翻訳機能を使って日本語にすることができましたので、こちらのサイトもご紹介させていただこうと思います。

一瞬「これを私がフランス語から訳したらけっこうすごいんじゃない?」とそんなことを考えたのですが、「いやいや、それどころじゃない!」と即断念しました(笑)。どなたか気が向いてくださる方、挑戦してくださる方がいらっしゃいましたらぜひお願いしたいところです。ちなみに私は、ルールを読むのも一苦労でした。いつか大幅に時間が確保できた際には、どなたか一緒にプレイしていただけたらいいななんて思います。

タロットの他にも、いくつか同時期に生まれたカードゲームが存在するそうなのですが、いずれも後に占い的な解釈が付与されたとされています。何故『カードゲーム』に〝占い〟という要素が結び付くのでしょう?――それらの背景を考えてみるのもまた面白い発見があるかも知れません。

以上、カードゲームとしてのマルセイユタロットについてのまとめでした。不十分なところもあると思いますが、少しでもお役に立てれば幸いです。

第6章:カードゲームから占いへ――マルセイユタロットの占い的な側面

これまで何度もお伝えしてきてしまいましたが、マルセイユタロットが本来〝読む〟ためのものではなかった、ということはご理解いただけたかと思います。
つまり、解釈は全てが読み手に委ねられていると言うことができますし、読み手が自由に意味付けできる余白のようなものが残されていると言っても過言ではありません。
ある意味、それこそが、後世の人々に新たな解釈を生み出させ、今に続く〝占い〟の始まりになったのだと言えると思います。

現在流通しているタロットは、カード1枚1枚に細やかな意味が付与されているものがほとんどです。しかし、いずれも起点はやはりカードゲームでした。
そのカードゲームを占いに取り入れようとした人々が現れたことで、新たな解釈が生まれていったのです。

中でも特に有名なのは、19世紀のオカルティスト Eliphas Levi(エリファス・レヴィ)です。

Eliphas Levi
出典:Wikimedia Commons

彼はマルセイユタロットに神秘主義的な解釈を結び付け、後世の〝占い〟に大きな影響を与えました。

エリファス・レヴィや、同時代のオカルティストの名前は、現代の漫画やアニメやゲームなどのキャラクター名として用いられることがあります。もしかすると、実在した思想家だということを知らずに耳にしたことがある方もいらっしゃるかも知れません。

本章では、「当管理人がもし当時の人間だったら?」という仮の視点から、カードゲームとしてのマルセイユタロットに含まれていた要素から、占いに取り入れられそうなものに着目し、現在ではそれがどのように扱われているか見ていきます。ぜひ、みなさんも「もし自分が当時の一員だったら?」という気持ちになって考えてみてください。

占いに取り入れられられそうな要素

使い回しの画像もあり恐縮ですが、改めてこれまでご紹介してきたマルセイユタロットの画像をご覧いただきたいと思います。みなさんなら、どのような要素であれば占いに取り入れてみたくなりますでしょうか。

人物や物体そのもの

言うまでもありませんが、まずはカードに描かれている『人物(役職や職業等含む)』や『物体』を〝象徴〟とし、意味を持たせることができると思います。
特に、ニコラ・コンヴェル版が制作された1760年のフランスは、まだ絶対王政の時代であり「王」や「女王」などという肩書きを持つ人物が実在しました。
今のような日本からでは考えにくいかもしれませんが、当時の厳しい法律や制度に苦しむ平民が〝占い〟といったものに心を寄せたくなるのは当然のことだったかも知れません。

これは当管理人の考えですが――本来、国を良くすべき立場であるにも関わらず責務を果たさず、私利私欲ばかりを肥やし国民に還元しないなんていう状況では、当時の人たちは一体何に希望を見出せたというのでしょう。どんなに良い明日を願ったとて、重税と搾取だらけの日常では、せめてカード(占い)に未来を託したくなる気持ちは何も不思議なことではない気がします。まるで、今もどこかの国にも通じるようなお話…おっと、少し熱が入り過ぎてしまいました。

現在は…

現代では、人物(役職等含む)や物体そのものを一つの〝象徴〟として読むことが一般的です。例えば「奇術師」のカード。「奇術師」と聞けば、みなさんはどのようなことを思い浮かべますでしょうか。私は〝器用さ〟をイメージしますが、一般的には〝クリエイティブ(創造)〟と意味付けされていることが多いようです。
ただし、占いにおける意味付けはもっと広範囲に及びます。「奇術師」だけではなく、例えば〝机の上に置かれた道具一つひとつ〟だったり〝周囲の花々や色〟なども〝象徴〟とし、1枚のカードから本当に多岐に渡る解釈や意味付けがなされています。

また、カップや金貨などのスートも、最初はカードゲームとしての優劣(強弱)を持った存在に過ぎませんでしたが、現代では、カップ=感情、金貨(現在はペンタクルという五芒星が描かれたコイン/お守りが主流)=物質、剣=知性、棒=感情というものを連想させるよう、スート一つひとつにも様々な意味付けがされています。

数・数字

マルセイユタロットは、大アルカナであれば1~21(一般的に「愚者」は0番が割り当てられますがマルセイユタロットでは番号がありません)、数札であれば1~10が存在します。ゲームの中では、数字が大きいほど強いカードとされていたそうですが、絶対王政の国でありながら、「皇帝」や「女帝」に大きい数字が割り当てられていないのは少し不思議な気がします。これは単なる序列ではなく、製作者たちの何らかの意図が込められていた可能性があるのかも知れません。

また、当時も既に〝数秘術〟と呼べるようなものは存在していたと考えられます(物凄く平たく言うと〝数〟を使った占いのこと)。数秘術の歴史を辿れば起源は2000年以上前に遡り、古代から数字に特別な意味を託す考え方は存在していたそうです。そのため、数や数字にも単なる序列以上の象徴性が込められていたとしても不思議ではありません(ただし、現代の数秘術と同一視するのは注意が必要です)。

ここで念のため、マルセイユタロットの大アルカナ(「愚者」を除いた21枚)を一覧にしてみたいと思います。当時の人たちが思う「強さの序列」として眺めてみますと意外な発見があるかも知れません。

番号カード名番号カード名
なし愚者11
1奇術師12吊るされた男
2女教皇13死神(本来は無題)
3女帝14節制
4皇帝15悪魔
5教皇16神の家
6恋人17
7戦車18
8正義19太陽
9隠者20審判
10運命の車輪21世界

改めて眺めてみますと、人物や役職だけでなく、抽象的で実体のよくわからないものも意外と多かったりすることに気が付きます。また〝人物〟を思わせるカードの中では「吊るされた男」が一番強いというのも面白い点だと思います。吊られていて、本来なら手も足も出ない状況だと言うのに…。
漫画『ジョジョの奇妙な冒険』でも、この大アルカナを基にして名付けられた『スタンド』という能力がありますよね。

現在は…

現在も、タロットにおける数や数字は数秘術的な解釈を用いて読まれるのが一般的です。

1=始まり、主体性、男性性
2=調和、協力、女性性
3=創造、三角形的なバランス
4=土台、四角形的なバランス

…というように、数字そのものを〝象徴〟として読んだりします(もちろん、これはほんの一例です)。

どちらかと言うと、ウェイト=スミスタロットは数に付与された解釈より、物語性やメッセージ性を感じ取られることの方が多いかと思います。一方、マルセイユタロットはカードゲーム由来ですから本来物語性は存在しません。その分、数に込められた解釈等をより濃く読み取れるという特徴が生まれ、それもまたマルセイユタロットならではの魅力だと思います。

正位置/逆位置

少し余談になりますが、カードの向きを占いに用いる『正位置/逆位置』といった読み方があります。この読み方を考案したのが Etteilla(エッテイヤ)と言われ、エリファス・レヴィよりも少し前の時代の人物になります。しかし、記録を見る限りでは、彼の活動は詐欺やペテンに近しく、個人的にはオカルティストと呼ぶには少し抵抗があります。とは言え、彼の影響力は非常に大きく、今日のタロット占いの基盤を築いた重要人物であることに違いありません。

現在は…

現在では、ほとんどの占いで正位置と逆位置が採用されている印象があります。基本的には正位置はカード本来の意味、逆位置はその意味が反転したり否定的になったりする、と解釈されることが多いようです。「逆位置=悪い」と受け取られる傾向が強い印象がありますが、読み手によっては、そのカードの本来の意味が十分に作用していない(抑制、遅延など)と考える人もいるそうです。

エッテイヤについてはあまり情報が多くなく、英語版Wikipediaだと比較的詳しい記述がありましたので、ご興味ある方はこちらをご覧ください。

Etteilla - Wikipedia

また、当サイトが推し進めています翻訳、アーサー・エドワード・ウェイト著『The Pictorial Key to the Tarot』にも〝Etteilla〟の記述があったため、別の記事でも少しだけ取り上げたことがあります。宜しければ、こちらの記事も併せてご覧ください。

『The Pictorial Key to the Tarot(PART1)』を解読しながら訳していく Vol.13
『The Pictorial Key to the Tarot(PART1)』を解読しながら訳していく Vol.34

今回はほとんど触れていませんが、マルセイユタロットの数札なんかもじっと眺めてみますと、描かれた花が咲いていたり咲いていなかったりと、ぱっと見では見逃してしまいそうな違いが実は細部に施されていることにも気が付きます。そうした小さな描写にまで意味を見出そうとすれば、解釈の幅は尽きることなく広がっていく――それもまた、マルセイユタロットの特徴なのだと思いました。

以上、マルセイユタロットのカードゲームから占いへの転用についてのまとめでした。

第7章:おわりに(まとめ)

ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。

出来る限り専門用語は使わず、多くの方に読んでいただけるよう配慮しながら書き進めてきたつもりです。不十分なところもあるかと思いますが、この記事が、マルセイユタロットに興味を持ち、もっと知りたいと思った方々にとって少しでもお役に立てれば幸いです。

元々はカードゲームとして生まれたマルセイユタロット。ある日、そこに誰かが自分の夢を託しました。また別の誰かは未来を、また別の誰かは想いを…

そうした積み重なりは、いつの日か〝遊び〟という枠を越え〝占い〟へと変貌を遂げました。更に、今日では心理学や宗教学と結び付けられることでまた新たな顔を覗かせるようになりました。

こうして、数え切れない人たちの想いや願いが込められたタロットは、いつしかただの〝カード〟ではなく、人々の心を映す鏡のような存在となっていきました――それこそが、今もなお人々を魅了し続けて止まないタロットの最大の魅力なのだと思います。

参考文献・資料・リンク集

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