『The Pictorial Key to the Tarot(§2 TRUMPS MAJOR)』翻訳・解読【奇術師】Vol.3

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こんにちは。

今回で「奇術師」の回は最後になります。

§2になり、冒頭から「長っ!!」と思っていましたが、少し先の方をぺらぺらと眺めていましたら、なんと9番「隠者」の部分が断トツで長いことを知りました。

具体的な数値をお伝えしますと、例えば、次の2番「女帝」は僅か9行。1ページの3分の1程度の文章しかありません。それに対し、なんと「隠者」は3ページ強

一体、どのような内容が書かれているというのでしょうか…。

しかし、私は「隠者」のカードが好きなので、「そんなに何が書いてあるんだろう?」と楽しみが増えました。

まだ少し先になりますが、当分やる気を保っていけそうです。

では、前回の一文を振り返りたいと思います。

前回は、当時まだカードゲームとしての『切り札(大アルカナ)』であったカードに付けられた様々な解釈は、個々が勝手に解釈したものに過ぎないということに始まり、その解釈を『真なる光ではない』と称し、神秘主義に基づかない俗的な解釈を批判し、否定するような内容でした。

言い方は違えど、これまでと同様、神秘主義に基づかない解釈や占い事、またその占い事にタロットを用いることを一貫して否定、批判する姿勢を見せています。

この辺は、正直、私も似たような考えを持っているので、だからウェイトの言うことが気になるのかなと感じています。

また、Vol.3になってようやく気付いたことなのですが、この調子で進んでいったとして、「まさか私の書いた『マルセイユタロット徹底解剖』が無駄になるんじゃ…」という恐れも感じています。もしかすると、その手の内容については全く触れられず、ただ否定と批判を繰り返していくのではないかと、薄っすらそんなようなことも感じてしまいました。

ただ、「隠者」の部分が3ページもあるので、さすがに全部が全部はそうならないだろうとも思います。やはり「隠者」までは頑張りたいです。

よろしくお願いいたします。

今回の一文:「奇術師」を巡る三つの解釈

今回の一文です。

For example, Eliphas Lévi says that the Magus signifies that unity which is the mother of numbers; others say that it is the Divine Unity; and one of the latest French commentators con-siders that in its general sense it is the will.

本文をそのまま引用しています。赤字の部分は改行時に使用されるハイフン(-)で間違いではありません。ハイフンを除いたものが元の単語になります。

Arthur Edward Waite
『The Pictorial Key to the Tarot』より

これを3つに分けて見ていきます。

【解釈Ⅰ】
〝For example, Eliphas Lévi says that the Magus signifies that unity which is the mother of numbers〟

【解釈Ⅱ】
〝others say that it is the Divine Unity〟

【解釈Ⅲ】
〝and one of the latest French commentators con-siders that in its general sense it is the will〟

ちなみに文中に使われている「;(セミコロン)」は、「文を区切るピリオドほど強くはないが、カンマよりも強い区切り」を表すそうです。

句点と句読点の間のような存在なわけですが、「同じテーマについて異なる解釈を並べている」ということを視覚的に強調する役割があるようです。

つまり「奇術師」のカードの解釈において、複数の解釈を紹介しているということかと思います。

では、本題へ入りましょう。

解釈Ⅰ

最初は〝For example, Eliphas Lévi says that the Magus signifies that unity which is the mother of numbers〟です。

知らない単語がそれほど多くはなかったので、このまま進めます。

まず〝For example, Eliphas Lévi says〟ですが、こちらは「例えば、エリファス・レヴィは言う」という意味になります。

そして次、一気にいきますが〝that the Magus signifies that unity which is the mother of numbers〟とありまして、こちらが「奇術師は、数の母である統一性を意味する」という意味になると思います。

しかし、私はこれが何を言っているのかさっぱりわかりません。

ですので、調べました。

すると、「数の母」は〝数を生み出すもの〟〝数の源〟と言い換えることができるそうです。〝unity〟は使い道が幅広く、「統一性」という意味は数字の「1」の代名詞になるほどの語だそうで、それは古代ギリシア(紀元前6世紀頃)の時代まで遡るほど、古くからそういうものだったそうです。

少し雑で申し訳ありませんが、突き詰めようとすると「数字の1は奇数ではない」「ピタゴラス派は〝1〟をモナドと呼ぶ」「数字ではない」などという検索結果が現れ、「あっ、これ以上行ったら大変なことになる」と察し、数に関しては一旦この辺りで止めにしておこうと思いました。

エリファス・レヴィは、そのピタゴラス派の哲学の概念を引用した可能性が高いとのことです。

つまるところ、「数を生み出す源=1」というようなことを言いたいのだと思います。

確かに数字は1から始まりますが、だからと言って、それが「数の母」という発想には行き着きませんでした。

あっ!!

そう言えば、ウェイト=スミスタロットの「魔術師」を、「物語(物事/全て)の始まり」というような解釈をしている人を見掛けたことがあります。

その解釈はここから来ているのでしょうか。

そう思うと、やはりエリファス・レヴィの影響力は本当に大きかったのですよね。その思想が150年以上続いていることになりますから。

ちなみに、私はそういった意味でも、現代におけるタロットカードの意味を調べようと思ったことがありません。巷で言われている解釈については多少は認識しているつもりですが、それを真実だとも思っていません。ですから、こうして現代を代表するタロットの作者本人である Arthur Edward Waite(アーサー・エドワード・ウェイト)の著書を漁っているわけです。

ここで、このエリファス・レヴィの解釈を挙げたとなると、ウェイトが「魔術師」のカードの説明をする時には「きっと違うことが語られているのでは?」と思ってしまうのですがいかがでしょう。

楽しみですね。

私も、ウェイト=スミスタロットの「魔術師」を見ても、「物事の始まり」と感じられたことはなかったので気になります。

タロットカード比較:ウェイト=スミスタロットの魔術師とニコラ・コンヴェル版の奇術師
【左】:ウェイト=スミスタロット「魔術師」
【右】マルセイユタロット(グリモー版)「奇術師」

だからと言って、「これ!」という何もないのですが、「始まり」というよりは「既に始まっている感」があると思っていて、本当に「始まり」を意味したいのなら、私なら赤ん坊とかを描くかなって思うんですよね。

真相はいかに!?

マルセイユタロット「奇術師」のエリファス・レヴィの意味付けにおいては、イラストというより、この「1番」という数字自体に意味付けした感じなのかも知れませんね。

では、一度まとめましょう。

〝For example, Eliphas Lévi says that the Magus signifies that unity which is the mother of numbers〟

→ 例えば、エリファス・レヴィは「奇術師」は数の母である統一性を意味すると言う

このような感じでしょうか。

では、先へ進みましょう。

解釈Ⅱ

次は〝others say that it is the Divine Unity〟です。

こちらも短いので、一気にいきます。

〝others say that it is the Divine Unity〟

他の人々は、それは神聖な統一性だと言う

このような意味になると思います。

今度は「神聖な統一性」とのことですが、この〝Divine Unity〟は神秘思想の文脈でよく使われる言葉だそうです。

先程の「数の母である統一性」を〝1〟とするエリファス・レヴィに対し、こちらは「一なるもの(The One)」という思想だそうです。

エリファス・レヴィの〝1〟はどちらかと言うと数字の〝1〟を表していると思いますが、こちらは数と言うより宇宙全体の話になってくるそうで、「数を数えるにも、まず〝数えられる世界〟が必要だ(すごい深い話ですよね)」ということで、言ってしまえば数を超えた〝1〟=すなわち〝宇宙/世界全体を一とする(The One)〟という考え方だそうです(この説明で伝わると良いのですが…)。

『根本原理』とも呼ぶそうで、こちらも「源」と言えば源のような気がしますが、私も調べながらも「1にもいろいろあるんだな~」というくらいの感覚でしかないの正直なところです。ですが、いざこうして文章にしてみますと、後者のような考え方は私にはなかったので「なるほど!!」となっています。

というわけで、同じ〝1〟だとしても、やはり読み手が違えば解釈が異なるということが浮き彫りになった瞬間を目の当たりにした気分です。

では、最後に進みましょう。

解釈Ⅲ

最後は〝and one of the latest French commentators considers that in its general sense it is the will〟です。

まずは単語から見ていきます。

one of the latest → 最新の一人
commentator(s) → 評論家、解説者
consider(s) → 考慮する、考える
general sense → 一般的な意味/感覚

※ここでは代表的なものを挙げています。

〝the latest〟が「最新の」という意味になるのが少し面白くないですか?
直訳すると「最も遅い」ですよね。

ですが、「一番後に出てきたもの」というような認識から「最新の」という意味になるそうです。

「なるほど!」とは思いますが、正直「普通に〝最新〟を思わす言葉でも良かったんじゃないの?(笑)」とも思ってしまいます。

ただし、これをただ「最新の」とするとやはり文脈的には少し違和感があります。個人的には、「最近」「近年」「昨今」というようなニュアンスで使われているのかなぁと感じます。

では、順番に訳していきましょう。

まず〝and one of the latest French commentators 〟ですが、こちらが「昨今のフランス人解説者の一人が」というような感じでしょうか。

普段であれば「評論家」の方が、ウェイトの文章には適切なことが多い気がしますが、ここは多様な「奇術師」の解釈を並べた一文ですので、今回は「解説者」が適切だと思いました。

当時〝タロット解説書〟みたいな本を出していたフランス人の方がいたのかも知れませんね。

次に〝considers that〟とありまして、こちらが「~だと考えている」という意味になります。

そして〝in its general sense〟ですが、こちらは「それの一般的な感覚で」というような意味になると思います。

この〝sense〟を何とするか少し悩ましいのですが、「意味」とすると日本語の文脈として不自然な気がしますし、「解釈」とするのはなんとなくウェイトの意向を無視しているような(もし本当に「解釈」を表したかったのなら他の語を使うような気がして)気もしたので、今回は「感覚」とするのが自然かなと思いました。

最後に〝it is the will〟ですが、こちらは「それは意志である」という意味です。

私はこれまで、助動詞としての〝will〟しか知らなかったのですが、初めて名詞としての〝will〟に出会いました。

「意志/意思、遺言、願望/望み」というような意味になるそうです。

では、一度まとめてみましょう。

〝and one of the latest French commentators considers that in its general sense it is the will〟

→ そして、昨今のフランス人解説者の一人は、それの一般的な感覚で、それは意志であると考えている。

このような感じでしょうか。
少し不自然ですが直訳寄りです。

「それの一般的な意味で」の「それ(its)」は、「奇術師」のカード(象徴)を指していると考えられます。

つまり、「奇術師」のカードは一般的な感覚では〝意志〟を思わせるもの、というようなことが語られているのかなぁと思いました。

では、まとめに入りましょう。

【後日追記】
この後の記事で〝expositor〟という単語が出てきます。こちらも「解説者」という意味で、文章を読み比べますと「あれ?そしたらここでの〝commentator〟は、やはり〝評論家〟というニュアンスが強いのかな?」という気がしました。大幅に意味がずれるわけではないのですが、ウェイトの意図をまた違った形で解釈できると思ったので、念のため、補足として追記しておきます。

まとめ|結論・解説・考察

改めて、今回の一文をご紹介しておきます。

For example, Eliphas Lévi says that the Magus signifies that unity which is the mother of numbers; others say that it is the Divine Unity; and one of the latest French commentators con-siders that in its general sense it is the will.

Arthur Edward Waite
『The Pictorial Key to the Tarot』より

また、これまでの流れも把握できた方がわかりやすいと思うので、再度、前回の結論をお伝えしておきます。

このことについて、多くの学び手たちが独自の解釈に則り、『切り札』に関する個々の体系を生み出してきたということは付け加えておくべきだろう。そして、それらは時に示唆的ではあるが、それが真の理解ではないということも。

そして、今回のこれまでの訳です(多少不自然でも、なるべく原文に手を加えずダイレクトに訳したものになります)。

→ 例えば、エリファス・レヴィは「奇術師」は数の母である統一性を意味すると言う

他の人々は、それは神聖な統一性だと言う

→ そして、昨今のフランス人解説者の一人は、それの一般的な感覚で、それは意志であると考えている。

最後に、本文の内容をより忠実に整えた(当サイト比)訳がこちらです。

例えば、エリファス・レヴィは「奇術師」は数を生み出す源である〝1〟を意味すると述べ、また他の者たちは、それは宇宙全体を一つとする〝1〟であると言い、また、昨今のフランス人解説者の一人によると、一般的な感覚ではそれを〝意志〟と考えているようだ。

このような形に整えました。

けっこう自分的には「できた」感があります。(前回も言っていましたが)

どうしてもウェイトの文章は、ただ訳すだけでは理解に至らないものが多く、補足を必要とすることが多いのですが、今回は道中にもしっかり解説を付け加えられたと思いますので、恐らくご理解いただけているのではないかと思います。

では最後に、またほんの少しだけ補足的な、小話的なことをご用意いたしましたので、良ければぜひ最後までお付き合いください。

解説・考察

お疲れさまでした。

今回の一文、割とすんなり入ってくる内容でしたね(良かったです)。

最後に、この「フランス人解説者の一人」について触れてみたいと思います。

最初は、「そんな、当時であったってフランス人の解説者(タロット関連の)なんていっぱいいるだろうに…」と特定できるなんて思っていなかったのですが、〝恐らく〟にはなりますが「この人なんじゃないかな~」という人物を見付けられたので、ご紹介させてください。

Paul Christian(ポール・クリスチャン)

  • 本名:Jean-Baptiste Pitois(ジャン=バティスト・ピトワ)
  • フランス、ルミルモン生まれ(1811–1877)
  • 作家、歴史家、ジャーナリストとして活動し、筆名〝ポール・クリスチャン〟で著作を発表。
  • 代表作は『Histoire de la magie, du monde surnaturel et de la fatalité à travers les temps et les peuples』(1870年)、日本名は『魔法の歴史と実践』。
    ∟ 作中、「奇術師(Magus)」のカードは〝意志(la volonté)〟と明確に意味付けしている。
  • 若い頃は聖職者を目指すも断念し、パリでロマン派文学者シャルル・ノディエと交流。これにより、オカルトに関心を深める。

当時~それより少し前くらいのタロットに関係しそうな人物で、且つフランス人でタロット関連の書籍を書いた人物、尚且つ「奇術師」というカードに〝意志〟という意味付けをした人物、ということで探してみたところ、すぐにこのポール・クリスチャンがヒットしました。

当時のフランス人作家(オカルト関連の)としては有名な人物だそうです。また、今回登場しているエリファス・レヴィから、カバラやタロットのレッスンを受けているという情報もありました(けど弟子ではないそう)。

「また」と言うのもなんですが、こちらもまた「タロットの起源はエジプトにあり」という説を推していた人物だそうです……。

確かに、〝Paul Christian タロット〟と検索すると、エジプトテイストのタロットカードが出てきます。

一説によると、「タロットの起源はエジプトにあり」と掲げてた Court de Gébelin(コート・ド・ジェブラン)や Etteilla(エッテイヤ)と、エリファス・レヴィのカバラ関連の知識を混ぜ合わせたような世界観を持っているそうです。

これまでにも何度もお伝えしてきていますが、現状、タロットの起源はイタリアですからね。

ということで、どう見ても人物を特定しているにも関わらず名前を挙げなかったのは、こういうところが理由だったのかも知れません(個人的な解釈ですが)。

ちなみに、このポール・クリスチャンが書いた『魔法の歴史と実践』はオンラインでも見れるので、もし気になる方がいらっしゃいましたら、ぜひ覗いてみてくださいね。フランス語ですが『Internet Archive』では、コピー&ペーストが可能なので翻訳することも可能です。

・Internet Archive
 ∟ 『Histoire de la magie, du monde surnaturel et de la fatalité à travers les temps et les peuples』(1870年)

ということで、今回はここまでになります。

つまるところ、「マルセイユタロットってこういう意味だよ」というコーナーではなく、あくまで、本当に当時知れ渡っていた解釈を教えてくれる一覧ということなのかも知れませんね。(+それに一言一言物申すウェイト、という感じで)

とは言え、「隠者」の部分が3ページ強もあるのは少し気になります。当時から、そんな内容が盛沢山のカードだったのでしょうか……。

次回は「女教皇」のカードですね。

やはり、カードの方がより面白く翻訳ができますね、なんて言ったらいけないかも知れませんが、実際そうなんですよね。(笑)

良くも悪くも、ウェイトの「わかる人だけわかればいい」というスタイルが冒頭からずっとでしたので、ようやく少し落ち着きながら翻訳ができている気がします。

もちろん、まだまだ先は長いのですが。

では、また次回。

最後まで見てくださり、ありがとうございました。

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