『The Pictorial Key to the Tarot(§2 TRUMPS MAJOR)』翻訳・解読【隠者】Vol.9
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こんにちは。
『タロットの世界』へお越しくださり、ありがとうございます。
いよいよ「隠者」も残り僅かとなりました。今回と次、あと2回で終了となります。
いやぁ~長かったですね。(笑)
まだ完全に終わったわけではありませんが、ウェイトが再表現した『四大枢要徳』の内容の濃さには参りました。そして、とても驚きました。
しかし、以前からお伝えしています通り、何故か私は「隠者」が好きなので、意欲的に取り組むことができました。
個人的には、とても面白かったです。
実際に訳すよりも、内容そのものを理解することの方が大変でしたが、「おぉっ!!」となった時の喜びは、やはり何にも代えがたい嬉しさがあります。
また、本を読むのが苦手な私ですので、きっと『The Pictorial Key to the Tarot』の訳をやっていなければ、スピノザに出会うこともなかったでしょう。
これまでゲームや漫画で、スピノザというキャラクターは耳にしたことがありませんでしたので(いるのかしら?)、本当に良い出会いでした。
残り2回となりましたが、そうは言っても、Vol.8~10は、AI曰く難易度7~9.5(10段階中)とのことでしたで、なるべく気を抜かず、丁寧に読み解いていきたいと思います。
では、よろしくお願いいたします。
前回の記事はこちら
今回の文章:心の公平さがもたらす判断の難しさについて
今回の一文です。
(a) because in proportion to the impartiality of the mind it seems sometimes more difficult to determine whether it is vice or vulgarity which lays waste the present world more piteously;
Arthur Edward Waite
『The Pictorial Key to the Tarot』より
久しぶりの一文です!!(泣)
なんでしょう、このボーナスステージ感。
§2に入ってからはほとんど、一度に三文くらいを扱っていましたので、つい安らいでしまいます。
そう言えば…と言うのもなんですが、§2に入るまでは、ほとんど一記事につき一文を区切って訳していたんですよね。
あの頃が嘘のようです。
自分の英語力が上がったなどとはとても思いませんが、ウェイトの文章を読み解く力は付いているのではないかと思います。
では、このまま本編へ突入します。
念のため、今回の一文を再掲しておきます。
〝(a) because in proportion to the impartiality of the mind it seems sometimes more difficult to determine whether it is vice or vulgarity which lays waste the present world more piteously;〟です。
いつも通り、まずは単語等のチェックから参りましょう。
・proportion → 比例、割合、比率
・impartiality → 公平さ、偏りのない
・seem → ~のように思われる、~に見える
・determine → 判断する、見極める
・whether → ~かどうか、~なのか~なのか
・vice → 悪徳、道徳的な悪さ
・vulgarity → 下品さ、俗悪さ、品のなさ
・lay(s) → 置く、横たえる
・waste → 荒廃、破壊、無駄にする
・lay(s) waste → 荒廃させる、台無しにする
・piteously → 哀れに、痛ましいほどに
※ここでは一般的なものを挙げています。
どんな内容が語られるのか、想像できそうな……。
いえっ、楽しみです!!
では、まず最初に〝because in proportion to the impartiality of the mind〟ですが、こちらが「何故なら、心の公平さに比例して」というような意味だと思います。
「心が公平であればあるほど」と言っています。
次に〝it seems sometimes more difficult to determine〟ですが、こちらが「それを判断することが時としてより難しく思われる」というような意味です。
続いて〝whether it is vice or vulgarity〟とありますが、こちらが「それが悪徳なのか、下品さなのか」という意味です。
〝or〟だけですと「AまたはB」と単なる選択肢を表現した形になりますが、〝whether〟があることによって「AなのかBなのか(どちらか)」という二者択一の疑問文になるそうです。
また「天気」を表す〝weather(ウェザー)〟と音はほとんど一緒だそうです。
最後に〝which lays waste the present world more piteously〟ですが、こちらは「(どちらが)今の世界をより哀れに荒廃させているのか」というような意味になります。
そう、かなり前にも扱いましたが、〝present〟って「贈り物」という意味だけではないのですよね。
「現在の/今の」「出席している」「提示する/紹介する」など、割と意味がばらばらなんですよね。
今回は「現在の/今の」という意味だと思います。
ウェイトが見てる世界が見えてきそうな一文ですね。
では、まとめてみましょう。
〝(a) because in proportion to the impartiality of the mind it seems sometimes more difficult to determine whether it is vice or vulgarity which lays waste the present world more piteously;〟
→ (a)何故なら、心の公平さに比例して、今の世界をより哀れに荒廃させているのが悪徳なのか、下品さなのか、それを判断することが時としてより難しく思われるからである。
今回の一文は、直訳でも十分内容が伝わってきますね(良かった!笑)。
こちらが、「何故「隠者」のところで、ウェイトが再表現した『四大枢要徳』を語ったか?」の理由の一つになります。
ウェイトから見える〝世界〟は、こんな風に見えていたのかも知れませんね。
では、まとめに入りたいと思います。
まとめ
改めて、今回の一文をご紹介します。
(a) because in proportion to the impartiality of the mind it seems sometimes more difficult to determine whether it is vice or vulgarity which lays waste the present world more piteously;
Arthur Edward Waite
『The Pictorial Key to the Tarot』より
また、これまでの流れも把握できた方がわかりやすいと思うので、前回の結論もお伝えしておきます。
この件全体の結論は交換の法則に基づく一つの取引だということである。神聖な事柄に関して言えば、求めるものを得られぬわけがない。それが供給と需要の法則である。
私がこの段階でこれらの点について触れたのには、二つの単純な理由からである。
そして、今回の直訳寄りの訳です(多少不自然でも、なるべく原文に手を加えずダイレクトに訳したものになります)。
→ (a)何故なら、心の公平さに比例して、今の世界をより哀れに荒廃させているのが悪徳なのか、下品さなのか、それを判断することが時としてより難しく思われるからである。
最後に、上記の訳を意訳寄りに整えた(当サイト比)訳がこちらです。
(a)何故なら、心が公平であればあるほど、今の世界を哀れに荒廃させているのが悪徳なのか下品さなのか、その見極めが、時として一層困難に感じられるからである。
そこまで大きく変わった部分はありませんが、ほんの気持ち程度整えました。
内容は、文章のまま受け取って差し支えないと思います。
最後に、少しだけ考察をお話しさせてください。
解説・考察
みなさんは今回の一文の意味を知って、どのように感じられましたでしょうか。
大元の話に戻りますが、そもそもここで語られている内容は、(恐らくは敢えて)「隠者」の欄でウェイトが『四大枢要徳』を再表現した理由でしたよね。
一見すると、いつものようにウェイトが何らかに対して悪口を言っているようにも見えますが、今回は、私はウェイトに賛成だなと思いながら訳していました。
あまり上手くお伝えできていないかも知れませんが、正直「あっ、100年前もこの世界ってそんな感じだったんだ」というのが、最初に思った素直な気持ちでした。
差し出がましいことかも知れませんが、僭越ながら、ここで語られているウェイトが見ている世界は、私が見ている世界と重なる部分があるように感じられたのです。
今回の一文で使われている〝vice〟は、どちらかと言うと「故意による悪徳」というニュアンスがあります。
代表的なもので言えば犯罪であったり、罪にまで問われないとしても、いじめといった行為なども含まれるでしょう。
要するに、本人が良くないとわかっていながらも働く悪事のことを指すのだと思います。
ちなみに、この地球上に法律がまったく存在しない国はないそうです(なんとなく気になって調べてみました)。
一方で〝vulgarity〟が意味する「下品さ/品のなさ」「低俗さ」も、ウェイトの文脈では〝悪〟として扱われていますよね。
「奇術師」のところでも扱ったことのある単語なのですが、英語的にもかなりきつめの語です。
基本的には「下品さ」と訳されることが多いようなのですが、どちらかと言うと、相手を見下したり、軽んじたりするようなニュアンスを含みます。
「哀れなほど低俗」とするサイトもありました。
つまるところ、ウェイトから見た世界と言うのは、確信的に悪事を働く者も、品のない低俗な人間も、どちらもこの世界をぼろぼろにしている、というようなことを言っているのだと思います。
伝わってますかね…。
本来であれば、法を犯した者が犯罪者として扱われますが、それでもウェイトとしては、品がなかったり、表面的な解釈ばかりする浅ましい人間は同等のように見ていて、その上、甲乙付け難いというようなことまで言っているのです。
つまり、ウェイトにとってはどちらも〝罪〟という解釈ができると思います。
「公平であればあるほど」とも述べていますが、恐らくは「冷静であろうとすればするほど」とか「客観的であろうとすればするほど」と言い換えることもできると思うのですが、文字通り、善悪のどちらにも傾かないような視点を持とうとするほど、本当に悪いのはどちらなのかがわからなくなる、と言っているのですよね。
ですが……おおまかに言えば〝犯罪〟と〝品位(の欠如)〟のようなものですよね。
そもそも、この二つを天秤にかけること自体、私には少し違和感があるのですが、いかがでしょうか。
もしかするといつも通り、表面的な解釈しかしない人間(ないし、理解の浅い人間)を、バカにするための演出のようなものだったのかなとさえ思えてきます。
最初は、「善悪をフラットな視点で見た時に、この世界は、罪を犯した者や、品のない浅ましい人間によって荒廃させられている」という意味だと思っていました。
ですが実際には、判断が付かないのではなく、敢えてウェイト流の遠回しで皮肉な言い方をして、理解の浅い人間を批判したかったのではないでしょうか。
つまり、ウェイトにとっては『真のタロット』を汚す者も〝悪〟であり、表向きは「隠者」のところで『四大枢要徳』を語った理由を述べるように見せつつ、〝vulgarity〟なる者たちへの批判も含めていたのではないでしょうか。
もしかしたら行き過ぎかも知れませんが、善悪の区別が付く、そして品がある(ないし教養等がある)というのは、先日のスピノザの思想を基盤に考えると、「理性的である」という言い方ができると思います。
そして、理性的であればあるほど、そのような人たちによって荒廃させられていく現実が見えてしまうのではないでしょうか…。
合っているかわかりませんが、となると、そんな世界で理性を保って生き抜くことは至難の業。
だからこそ、この廃れていく一方の現実を正しく見極めるための心得のようなものとして、自身の『四大枢要徳』を語ったのではないでしょうか。
もっとも、§2は表向きにはマルセイユタロットの紹介であり、実際ウェイト=スミスタロットの「隠者」について、然程重要なことは語られていなかったと記憶していますが、もしかすると、この部分の理解を深めておくと、本編でウェイト=スミスタロットの「隠者」が紹介された際に、巷で知られている隠者以上の「スーパー隠者」として理解できるかも知れませんね。
なんか不思議ですよね。
〝知る〟ことによって〝世界は荒廃していき〟、その世界を上手に生き抜くために〝徳〟がある。
でも、その〝徳〟も決して楽な道のりではない気がしたのですが……となると、〝楽〟という選択肢はないのでしょうか…ぼそっ(小声)。
もしかすると、隠者が持つ灯り(ランタン)には、ウェイトが再表現した『四大枢要徳』という人生の道標が重ねられ、隠者そのものは、ウェイト自身の世界観を投影したような設定になっているのかも知れませんね。

では、今回は以上となります。
最後まで見てくださり、ありがとうございます。
いよいよ、次が「隠者」最終回となります。
お楽しみに。

