『The Pictorial Key to the Tarot(§2 TRUMPS MAJOR)』翻訳・解読【女帝】

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こんにちは。

『タロットの世界』へお越しくださり、ありがとうございます。

今回から、マルセイユタロット3番「女帝」のカードに入ります。

ニコラ・コンヴェル版(グリモー版)
マルセイユタロット:「女帝」

前回は、「奇術師」のカード同様、当時のマルセイユタロットの「女教皇」について説明がされるのかと思いきや、まさか実際に語られていたそのほとんどが、ウェイト=スミスタロットの「高位の女司祭」に設けられらた象徴についてでした。

てっきり、当時のマルセイユタロットの「女教皇」に付けられた解釈を知れるものだと楽しみにしていたので、さすがにこれには驚きました。

私は、これがウェイトによる印象操作のようなものに感じ、ウェイトにとって「高位の女司祭」は特別な思い入れがあるものなのではないかと考え、考察を挙げました。

更に、ウェイトが掲げた「神の法」「グノーシス」「シェキナー」といった概念についても調べ、整理しました。

今回は、当時のマルセイユタロットの解釈をちゃんと知れると良いのですが…。

前回の「女教皇」改め「高位の女司祭」は一度に訳してしまったため、内容が物凄く膨大になってしまい、読んでくださる方も大変だったと思います。私も大変でした。(笑)

内容を見てないことにはまだ何とも言えませんが(リアルタイムで記事を書き進めているもので)、もしかすると、多少物足りなくてもやはり一文ずつ分けていくことにするかも知れません。

様子を見ながら進めていきたいと思います。

では、本題に入りたいと思います。

よろしくお願いいたします。

今回の文章:「女帝」の描写と象徴

今回の文章です。

3. The Empress, who is sometimes repre-sented with full face, while her correspondence, the Emperor, is in profile.

As there has been some tendency to ascribe a symbolical signi-ficance to this distinction, it seems desirable to say that it carries no inner meaning.

The Empress has been connected with the ideas of universal fecundity and in a general sense with activity.

本文をそのまま引用しています。赤字の部分は改行時に使用されるハイフン(-)で間違いではありません。ハイフンを除いたものが元の単語になります。

Arthur Edward Waite
『The Pictorial Key to the Tarot』より

それぞれ一文ずつ見ていきたいと思います。

よろしくお願いいたします。

一文目:「女帝」と「皇帝」のカードに見られる違い

では、一文目〝3. The Empress, who is sometimes represented with full face, while her correspondence, the Emperor, is in profile. 〟を見ていきましょう。

単語の整理から行っていきます。

Empress → 女帝
represented → 描かれる、表現される
full face → 正面の顔、真正面から見た顔
correspondence → 対応するもの、相手役
in profile → 横顔、横から見た顔の描写

※ここでは代表的なものを挙げています。

最初は〝3. The Empress, who is sometimes represented with full face〟ですが、こちらは「3、「女帝」は時に正面の顔で描かれることがある」というような意味です。

「え?急に違う角度から来た!」という驚きが隠せませんが、それに対し〝while her correspondence, the Emperor, is in profile〟とありまして、こちらが「一方で、彼女と対である皇帝は横顔である」というような意味になります。

「え?そうなんだっけ?」と思ったので、もう一度「皇帝」のカードも並べて撮影してみました。

マルセイユタロット(ニコラ・コンヴェル版)
左:「女帝」右:「皇帝」

あっ、本当ですね。確かに「皇帝」は横を向いています。

と言いますか、顔だけの話ではなく、体ごと横を向いているようにも見えますね。

正直、これまであまり「皇帝」のカードをじっくり眺めたことがなかったです、特にマルセイユタロットの方は。

悪気はないのですが、こんな、そっぽを向いて、あまり威厳を感じられなかったのか、実際に今見るまで、これが「皇帝」のカードという認識がありませんでした。

ウェイト=スミスタロットの方の「皇帝」は、私はなんとなく「教皇」のカードに縁がありまして、「皇帝(4番)」「教皇(5番)」と続いているので「なんだか地味なカードが並んでるな~」と思って眺めていた記憶があります。

ちなみに、ウェイト=スミスタロットの「皇帝」は前を向いています。

ウェイト=スミスタロットの「皇帝」のカード
ウェイト=スミスタロット「皇帝」

ここから、ウェイトの喝が入るのでしょうか…。

一度まとめます。

〝3. The Empress, who is sometimes represented with full face, while her correspondence, the Emperor, is in profile. 〟

→ 3、「女帝」は時に正面の顔で描かれることがあり、一方、彼女と対である皇帝は横顔である

ここでの内容は、そのまま受け取って良さそうですね。

これから何が語られるのか気になるところです。

では、もう一文も見ていきましょう。

二文目:通俗的な解釈を否定する

二文目は〝As there has been some tendency to ascribe a symbolical significance to this distinction, it seems desirable to say that it carries no inner meaning.〟です。

また、単語や熟語の整理から行っていきましょう。

tendency → 傾向
ascribe → 帰する、~に帰属させる
significance → 意義、意味、重要性
distinction → 区別、違い
desirable → 望ましい
inner meaning → 内的な意味、深い意味

※ここでは代表的なものを挙げています。

では、まず〝As there has been some tendency〟ですが、こちらは「いくらかの傾向があるので」という意味です。

〝As there has been〟に「~がこれまで存在してきたので/見られてきたので」というようなニュアンスがあるそうです。

次に〝to ascribe a symbolical significance to this distinction〟ですが、こちらが「この違いに象徴的な意味を帰属させる」というような意味になると思います。

「帰属する」という語だと少しわかりづらいと思いますが、細かく噛み砕きますと、特定の人やものに何らかの特性や性質を持たせる(関連付ける)時に用いる語です。ここでは、「女帝」と「皇帝」の顔の向きが違うことに何かしらの意味を持たせようとするということを言いたいのだと思います。

ですが、〝it seems desirable to say〟とありまして、こちらが「それは言っておくことが望ましいと思われる」というような意味です。

〝it seems desirable〟は「~するのが適切だと思われる」という、少し控えめな表現だそうです。

最後に〝that it carries no inner meaning〟ですが、こちらが「それは内的な意味を持っていないということを」というような意味になると思います。

〝carries(carry)〟と聞くと「運ぶ」を連想しがちですが、「持つ」とか「帯びる」とか「含む」という意味もあるそうです。

さて、一度まとめてみましょう。

〝As there has been some tendency to ascribe a symbolical significance to this distinction, it seems desirable to say that it carries no inner meaning.〟

→ この違いに象徴的な意味を帰属させようとするいくらかの傾向があるので、それは内的な意味を持っていないということを言っておくことが望ましいと思われる。

まずは直訳寄りの訳にしましたが、内容そのものは伝わってくると思います。日本語としては少し硬い気もしますが、要は「女帝と皇帝の顔の向きの違いに意味なんてないよ」ということを主張しているようですね。

となると、やはりこの後に自身の解釈を述べるのでしょうか…。

どうやら、楽しみにしていた当時の解釈を聞けることはなさそうな気がしてきました…ぐすん。(泣)

あと一文で終わりなのですが、いけそうなので進めてしまいましょう。

三文目:ウェイト自身の解釈と一般的な解釈

では、三文目〝The Empress has been connected with the ideas of universal fecundity and in a general sense with activity.〟を見ていきます。

ここ最近出てきた単語がいくつかありますね。知らない単語や熟語だけさっと整理します。

connected with → ~と結び付けられている
universal → 普遍的な、全体的な
fecundity → 多産、豊饒、生命を生み出す力

※ここでは代表的なものを挙げています。

「豊饒」は「ほうじょう」と読みます。

確かに「女帝」のカードはしばしば「ほうじょう」と呼ばれているのを耳にしたことがある気がします。

ただ、こちらは耳にして聞くだけなので、どちらを指しているのかはわからないのですが、ここまで細かい説明をされている方を見たことがないので、恐らく多くの方が「豊穣」を指しているのではないかという気がしています。

農業に携わっている方であれば、そこまで珍しい言葉ではないかも知れませんが、私がこれまで生きてきた中では、この言葉をゲーム以外では聞いたことがありません。やはり、それは「豊穣神」という表現でした。

私自身の学が乏しいということは言うまでもありませんが、やはり一般的に「ほうじょう」と聞いた時に「豊饒」を思い浮かべる方は決して多くはないと思います。

「豊穣」も間違いではないと思うのですが、厳密に言うと「豊穣」と「豊饒」の意味には違いがあるので、念のため記載しておきます。

  • 豊饒
    土地が肥えて作物がよく実ること
  • 豊穣
    (主に)穀物が豊かに実ること

実際の単語の意味も踏まると、やはり「豊饒」の方が適切な気がします。そのため、ひとまずは「豊饒」の方で訳を進めさせていただきたいと思います。

では、訳を進めていきましょう。

まず〝The Empress has been connected with〟ですが、こちらが「女帝は~と結び付けられてきた」という意味になります。

一度目に〝The Empress〟が出てきた時には全部がイタリック(斜めの字体)表示だったのに、今回は〝Empress〟だけイタリックなのですね。一度目は「女帝」というカードそのものを指し、二度目は「女帝」という象徴そのものを指しているという違いがあるようです。

次に〝the ideas of universal fecundity〟ですが、こちらは「普遍的な豊穣の観念」というような意味です。

私は、あまり「普遍的」という語に馴染みがないのですが、調べてみますと「普遍的な豊饒」というのは「いつの時代であっても生命を生み出す力や繁栄する力がある」という理解に落ち着きました。かっこいいですね。

一時的でも一般的でもなく、例外なく広く長きに渡り、ということなのでしょう。

では、最後の〝and in a general sense with activity〟ですが、こちらは「そして、一般的な意味では活動と」というような意味です。

「え!?これで終わり?」という気持ちが否めませんが、一度まとめてみましょう。

〝The Empress has been connected with the ideas of universal fecundity and in a general sense with activity.〟

→ 女帝は普遍的な豊饒の観念、そして一般的な意味では活動と結び付けられてきた。

まずは直訳気味にしましたが、これでも内容は掴めると思います。

みなさんももうお気付きかと思うのですが、恐らく「普遍的な豊饒の観念」というのはウェイト自身の解釈だと思います。後に「一般的な」と付け加え区別しているところからも、それは間違いないでしょう。

ですが、結局ここでもウェイト自身の解釈が前面に出てきてしまい、当時の解釈はほとんど語られていないままです(まったく無いというわけでもないのですが…)。

正直、それが個人的にはとても残念です。(泣)

後に、自身のカードの解説の章を設けいてるのにも関わらず(というか本来それがこの本の核であるはずなのですが…)、何故こんなにも先走ってしまうのでしょうか…。

確かに、「簡潔に一覧しておきます(【PART1】最終回より)」にはなっているとは思いますが、結局のところ「期待していたほど(当時の解釈が)全然載ってない!!(泣)」というのが本音です。

これが、ウェイトの意図的なものなのかはまだ分かりませんが、薄々、今後もこの調子で続きそうですね…。

とは言え、前進あるのみですが。

では、最後に訳を整え、軽い解説を付け加えて終わりにしたいと思います。

まとめ

改めて、今回扱った文章をご紹介します。

3. The Empress, who is sometimes represented with full face, while her correspondence, the Emperor, is in profile.

As there has been some tendency to ascribe a symbolical significance to this distinction, it seems desirable to say that it carries no inner meaning.

The Empress has been connected with the ideas of universal fecundity and in a general sense with activity.

Arthur Edward Waite
『The Pictorial Key to the Tarot』より

また、これまでの流れも把握できた方がわかりやすいと思うので、前回の結論もお伝えしておきます。

2、「高位の女司祭」、「女教皇ヨハンナ」、あるいは「女性の教皇」。
初期の解説者たちは、このカードを「母」、または「教皇の妻」と名付けようとしてきたが、それはその象徴に反している。
時に「神の法」や「グノーシス」を表すものと考えられ、その場合、女司祭は「シェキナー」の概念に対応します。
彼女は秘教の伝承であり、設けられた秘儀の中でもより高位の意味を象徴しています。

そして、今回のこれまでの訳です(多少不自然でも、なるべく原文に手を加えずダイレクトに訳したものになります)。

→ 3、「女帝」は時に正面の顔で描かれることがあり、一方、彼女と対である皇帝は横顔である

→ この違いに象徴的な意味を帰属させようとするいくらかの傾向があるので、それは内的な意味を持っていないということを言っておくことが望ましいと思われる。

→ 女帝は普遍的な豊饒の観念、そして一般的な意味では活動と結び付けられてきた。

最後に、本文の内容をより忠実に整えた(当サイト比)訳がこちらです。

「女帝」のカードは、正面を向いた顔で描かれることがあるが、一方、彼女と対となる皇帝は横顔である。
この違いに象徴的な意味を見出そうとする傾向も見られるが、それは内的な意味を持たないと述べるのが適切でしょう。
「女帝」は普遍的な豊饒の観念と、一般的な意味では活動と結び付けられてきました。

はい、このように仕上げました。

今回はそこまで複雑な内容ではなかったので良かったです。(笑)

解説・考察

解説と言うほどではありませんが、少しだけ補足をします。

恐らくなんですが、この「女帝」と「皇帝」のカードが対の関係にあるということについては、ウェイト=スミスタロットに限っての話だと思います。

ウェイト=スミスタロット
左:「女帝」右:「皇帝」

また以前からもお伝えしていますように、マルセイユタロットはそもそも遊戯を目的としたカードゲームです。元々、大アルカナの数の大小は強さを表すものに過ぎませんでした。後世に付け加えられた解釈は別として、〝対〟という関係にあるというのは、ウェイトの一主張に過ぎないということを念頭に置く必要があるかと思います。

現状、このカードがどう〝対〟になっているのか私にはわかりませんが、少し先の、ウェイト=スミスタロットの「女帝」の解説を楽しみにしていましょう。

Eliphas Levi(エリファス・レヴィ)の「女帝」

私は、エリファス・レヴィについてはほとんど知りません。

ですが、これまでの訳を進める中での印象として、エリファス・レヴィの解釈は、当時としては一般的であり、また現代にも通ずる代表的な解釈であったと考えています。

そのため、当時のエリファス・レヴィによる「女帝」の解釈を取り上げておこうと思いました。

私も普通に気になりましたし。

以下、当時エリファス・レヴィが「女帝」を紹介する際、自身の著書『Dogme et Rituel de la Haute Magie(1854-56)』に記述していた内容を簡単にまとめたものになります(日本語的には『高等魔術の教理と儀式』と呼ぶそうです)。

  • カードの絵柄に関して
    ・翼を持つ女性が描かれている
    ・王冠を被り、王座に座る
    ・世界(地球)を乗せた王笏(王権を象徴する杖)を掲げている
    ・象徴は鷲(魂と生命の象徴)
  • 神話的な対応
    ・ギリシャの「天の愛」=アフロディーテ・ウラニア
    ・黙示録の「太陽をまとい、12の星の冠を被り、月を足元に置く女性」と結び付けられる
    ・天のイシス、グノーシスの象徴
  • 象徴的な意味付け
    ・天の母(Celestial Mother)、天の女王
    ・三位一体の神秘の精髄(霊性・不死・天の女王)
    ・霊性と知恵に均衡された能動的知力(Binah)
    ・ヘブライ文字「ギメル」に対応し、宇宙を含む無限性を象徴

確かに、絵柄に関しての内容はマルセイユタロットの「女帝」を表していますね。

念のため、もう一度載せておきます。

マルセイユタロット(ニコラ・コンヴェル版/グリモ―版)「女帝」のカード
マルセイユタロット「女帝」

ちなみに、エリファス・レヴィはフランス人なのですが、後の1896年にはなんと、この著書をウェイトが英訳しています……。

ウェイトが彼の影響を受けていないわけがないですよね。

私は、エリファス・レヴィにも興味が湧いてきてしまいました。

最初はウェイトしか知りませんでしたから、「エリファス・レヴィ?興味ないね」というような心持ちでしたが、訳を進めているうちに度々遭遇する機会を頂けまして、知れば知るほど「あれ?この人すごいんじゃない?」と思うようになってきてしまいました。

しかも…と言うのもなんですが、この土台があって、ウェイトはこの土台を再構築しているわけですよね。

『オカルティズムの父』と言われるには、それほどまでの実力があったのだとようやく思い知らされました。

なんだかんだ言いましたが、一度に進められてしまいましたね。

今回はここまでです。次回は「皇帝」になります。

いつもご覧いただき、本当にありがとうございます。

また次回。

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