『The Pictorial Key to the Tarot(§2 TRUMPS MAJOR)』翻訳・解読【正義】Vol.2

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『The Pictorial Key to the Tarot(§2 TRUMP MAJOR)』翻訳・解読【正義】のアイキャッチ画像。

こんにちは。

『タロットの世界』へようこそ。

いつもご覧いただき、ありがとうございます。

今回も「正義」の続きを見ていきたいと思います。

これまで、特に明確な根拠も語られないまま「タロットの起源はエジプトにあり」説を否定していたウェイトでしたが、ついに前回、恐らく初めて根拠と思えるようなことを口にしました。

それは、「もしタロットが太古ほど昔から存在するものであったなら、この正義のカードはもっと古風な描かれ方をされていたはずだ!」ということです。

こちらが、その対象と思われる絵ですね。

マルセイユタロット(ニコラ・コンヴェル版/グリモー版)の「正義」のカード
マルセイユタロット:「正義」
(ニコラ・コンヴェル版/グリモー版)

これまで、表現こそいろいろあれど、根本的に否定や批判が目立つことの方が多かったウェイトですが、これには私も「確かに…」と頷く他ありませんでした。

仮に「エジプトっぽい絵を描いてみて」と言われたら、きっと多くの方が〝顔を横に向け、身体だけが正面を向いている〟一風変わった見た目の絵を描くのではないでしょうか。

ウェイトの主張は、非常に的を射ていたと思います。

今回はどのようなことが語られるのでしょうか、楽しみですね。

では早速、本題に入りたいと思います。

前回の記事はこちら

『The Pictorial Key to the Tarot(§2 TRUMPS MAJOR)』翻訳・解読【正義】Vol.1

「正義」のカードによって示された『タロット』本来の価値を解説。エジプト起源説の否定を読み解き、ウェイトの文体から得た筆者の気付きにも触れます。

今回の文章:女神アストレアの存在とタロットの起源説再び

今回扱う文章です。

The female figure of the eleventh card is said to be Astræa, who personified the same virtue and is represented by the same symbols.

This goddess notwithstanding, and notwithstanding the vulgarian Cupid, the Tarot is not of Roman mythology, or of Greek either.

※原文にある改行時に用いられるハイフン(-)は省略しています。

Arthur Edward Waite
『The Pictorial Key to the Tarot』より

またしても、カードの描写について語られているように思います…。

また一文ずつ見ていきましょう。

それでは、よろしくお願いいたします。

一文目:正義=11番目を前提とする記述操作―すり替えられた伝統

まずは〝The female figure of the eleventh card is said to be Astræa, who personified the same virtue and is represented by the same symbols.〟を見ていきたいと思います。

単語等の確認から行います。

Astræa → アストレア(ギリシャ神話の神)
personified → 擬人化した、具現化した、体現した
virtue → 徳、(ここでは)正義
represented → 表される、表現されている

※ここでは一般的なものを挙げています。

〝Astræa〟とありますが、この〝a〟と〝e〟を合体させたような文字は、ウェイトの造語ではなく、「リガチャ(合字)」と呼ばれるラテン文字です。

〝æ〟自体は「アッシュ」という文字名だったと思います(発音/読み方はまた異なります)。

現在は〝Astrea〟とする方が一般的ですが、〝Astræa〟という表記も実際に使われてきた綴りだそうです。

〝æ〟は、これまでにも何度か出てきているのですが、それはウェイトの造語だったと記憶しています。

ただ、ウェイトらしい使い方だったと思うのですが…すみません、何の単語に使われていたかは忘れてしまいました。

では、参りましょう。

まず〝The female figure of the eleventh card〟ですが、こちらは「11番目のカードの女性像は」という意味です。

すごいですね。

まるで、最初から大アルカナ11番目のカードが「正義」であったかのような始まり方をしています。

本来のマルセイユタロットでは8番目であることを、完全に無視しています…。

続いて〝is said to be Astræa〟ですが、こちらは「アストレアであると言われている」という意味です。

アストレアは、ゲームやアニメ等のキャラクター名として使われることが多いので、きっと耳にされたことのある方も多いのではないかと思います。

ギリシャ神話に登場する『正義の女神』で、天秤と一緒に描かれていることが多いです。

本当は、ここで〝アストレア〟について触れたい気がするのですが、大幅に道が逸れてしまう気もするので、後ほどにしたいと思います。

また、〝アストライア(ー)〟〝アストレイア(-)〟など他にも呼び方があるそうなのですが、私は最初に「アストレア」と覚えてしまったので、アストレアで進めさせていただきたいと思います。

次に〝who personified the same virtue〟ですが、こちらが「(アストレアは)同じ徳を擬人化した」というような意味だと思います。

この「同じ徳」というのは、「正義(justice)」のことだと思うので、「正義を擬人化したものがアストレア」ということを言っているのだと思います。

〝personified〟をどう訳すか迷いますね。

最後に〝and is represented by the same symbols〟ですが、こちらは「そして、同じ象徴らによって表されている」というような意味です。

細かい部分ですが、複数形ですので「象徴ら」としました。

こちらは「アストレアの象徴とされるものと同じ象徴らによって表現されている」というような解釈で差し支えないと思います。

一度まとめてみましょう。

〝The female figure of the eleventh card is said to be Astræa, who personified the same virtue and is represented by the same symbols.〟

→ 11番目のカードの女性像は〝アストレア〟であると言われており、(アストレアは)同じ徳を擬人化し、同じ象徴らによって表されている。

このような感じでしょうか。

内容そのものは大丈夫そうですよね。

次の文章に進む前に、ここでの〝アストレア〟について少しだけ触れておきたいことがあります。

神話としての〝アストレア〟については、また『考察』の方で取り上げていますので、ぜひそちらもご覧ください。

ここでは大枠の概要だけ、お話ししたいと思います。

ウェイトは「同じ象徴ら」という言い方としていますが、これは言うまでもなく「天秤」や「剣」のことを指していると考えて良いと思います。

個人的には、「天秤」は元から、「剣」は後付けという印象だったのですが、せっかくですので、〝アストレア〟についての変遷(へんせん)も少し調べてみました。

すると――なんと、その全部が後付けだったということがわかったのです(そんなバカな…笑)。

ご存知の方も多いと思うのですが、ギリシャ神話やローマ神話に限らず、同じ神様を指していながらも、時代や土地ごとに名前や物語が変わるというケースは非常に多いです。

アストレアも、その例外ではありませんでした。

アストレアにまつわる変遷を簡単に

① テミス(Themis):紀元前8~7世紀頃
 ギリシャ神話〝法〟の女神(アストレアの「法、秩序」のルーツ)
 後にアストレアの母とされる
 天秤は所持していない

② ディケー(Dike)、アストレア:紀元前7~5世紀頃
 テミスの娘とされる(アストレア本体の誕生)
 ギリシャ神話は口伝であったため当時は別の存在とされた
 「正義」「乙女」「乙女座と結び付けられる」など、重なる象徴が多かったため後世で同一視されるようになった
 この時点ではまだ天秤は登場していな

③ ユースティティア(Justitia):紀元前1世紀~ローマ帝政期
 ローマがギリシャ神話のディケー/アストレアを再構築
 「天秤」「剣」「目隠し」などの象徴が段階的に追加される
 英語の〝Justice〟が語源
 現代の『正義の女神像』の完成形

ということで、今から約2600年程前に最初のアストレアが誕生し(②)、そこから約500年程の歳月を経て③に至り、更にそこから「天秤」や「剣」といった象徴が②に逆輸入された、という流れだそうなのです。

また、もしかすると的外れなことを言うかも知れませんが、このことについて調べている中で、一つ気になる点がありました(独り言として聞き流してください)。

この一文で語られている内容は、ウェイト=スミスタロットの「正義」のことではないとは思うのですが、アストレアの変遷を見ると、「あれ?ウェイトはアストレアの成り立ちを知らなかったのかな?」という疑問が浮かび上がるのです。

もし、ウェイトがアストレアの成り立ちを知っていたのなら、ウェイト=スミスタロットの「正義」の描写は少し変ではありませんか?

ウェイト=スミスタロット「正義」のカード
ウェイト=スミスタロット:「正義」

こちらはウェイト=スミスタロットの「正義」のカードになりますが、この一文の内容と同様に、天秤と剣を携えていますよね。

ですが、もし本来のアストレアを知っていたのなら、むしろウェイトなら、こんなことを言うのではないでしょうか。

「それらは、後世で付与された俗的な解釈に過ぎない!!」

いかがでしょうか?

もしウェイトが、初代アストレアの天秤や剣といった描写がなかったことを知っていたのなら、後から付与された天秤や剣に対しては、むしろ切り捨てるくらいのことを言いそうな気がするのです。

これらのことが学術的に明らかとなったのは19世紀後半~20世紀半ばだそうなので、必ずしもウェイトが知ることができなかったというわけでもないとは思うのですが…もしかすると、当時はまだ一般的にはあまり知られていないことだったのかも知れませんね。

また、ここではあまり細かくは触れませんが、ウェイト=スミスタロットの「正義」は、天秤座と結び付けられていたと思います。

この一文は〝アストレア〟について語られていますが、アストレア自体は乙女座とされていますから、ウェイト=スミスタロットの「正義」には〝アストレア〟そのものの概念は反映されていないのかも知れないなとも思いました(ご清聴ありがとうございました)。

では、次の文章に進みます。

二文目:新たな否定――タロットの神話起源説

二つ目の文章は〝This goddess notwithstanding, and notwithstanding the vulgarian Cupid, the Tarot is not of Roman mythology, or of Greek either.〟です。

また、単語等から確認していきます。国名が多いですね。

goddess → 女神
notwithstanding → ~にも関わらず、~はさておき
vulgarian → 俗物、下品な、教養のない
Cupid → キューピッド(ローマ神話の神)
Roman mythology → ローマ神話
Greek → ギリシャ
either → ~もまた~ではない(否定文)

※ここでは代表的なものを挙げています。

これまで訳を進めてきた中で、「思っていた以上に神話が出てくるな」という印象があります(それも「さも、知っていて当然」かのように…)。

語られた神話については、都度調べてきてはいるのですが、私自身、神話はまだまだ詳しくありません。

前々から興味はあるのですが、なかなか一朝一夕にとはいかないものです。

何処かのタイミングで、『The Pictorial Key to the Tarot』の解読にも役立てられる、神話に関する〝まとめ記事〟のようなものも書けると良いなと思ってはいるのですが…(いつになるかはわかりませんが備忘録としても記載)。

では、参ります。

まず〝This goddess notwithstanding〟ですが、こちらは「この女神はさておき」という意味です。

〝notwithstanding〟という単語を初めて知ったのですが、実在する単語だそうです(でもやっぱり少し古風な表現だそう)。

つい、「また、ウェイトの造語かな」と思ってしまいました。

ですが実際、〝not〟と〝with〟と〝standing〟が合体したような、あまり単語らしくない単語ですよね。

次に〝and notwithstanding the vulgarian Cupid〟ですが、こちらは「そして、俗っぽいキューピッドもさておき」というような意味だと思います。

〝vulgarian〟を「ブルガリアン」と読んでしまったのですが、正しくは「ヴァルガリアン」というような読みになります。

前文からは一転、アストレアと俗っぽいキューピッドが同等のような扱いになっている気がします。

最近、私も「俗っぽい」とか「世俗的」とか「俗世間」という言葉を多用するようになってしまったのですが、絶対ウェイトのせいだと思います。(笑)

前々から、全く使うことがないという語ではありませんでしたが、先日、たまたま初対面の方と数分お話しする機会があった際にも、つい自然と出てきてしまって、「はっ、しまった。今は違うんだった! 」と妙に平然を装ってしまいました(余談でした)。

ちなみに、この「俗っぽいキューピッド」は、恐らくウェイト=スミスタロット以前の「恋人たち」のことを指しているのかと思います(例:下記画像 右)。

左:ウェイト=スミスタロット「恋人たち」、右:マルセイユタロットの「恋人たち」
左:ウェイト=スミスタロット
右:マルセイユタロット

§2の「恋人たち」のところでは、実際には「異教のキューピッド」と、何とも言い難い呼び方をしていましたが(懐かしいですね)。

私はそれまで〝天使〟だと思っていたので、「恋人たち」で語られた内容はとても有益でした(ちなみにウェイトはこのキューピッドのことも全否定しています)。

続いて〝the Tarot is not of Roman mythology〟ですが、こちらが「タロットはローマ神話のものではない」というような意味だと思います。

そして〝or of Greek either〟ですが、こちらが「あるいはギリシャ(神話)のものでもない」というような意味になります。

一度まとめてみますね。

〝This goddess notwithstanding, and notwithstanding the vulgarian Cupid, the Tarot is not of Roman mythology, or of Greek either.〟

→ この女神はさておき、そして、俗っぽいキューピッドもさておき、タロットはローマ神話のものでも、あるいはギリシャ(神話)のものでもない。

この一文、内容自体はそこまで複雑ではないと思うのですが…いかがでしょう?

なんとなくですが、私的には不思議に感じられる点がいくつかあります。

まず、「え?ウェイト=スミスタロットにも神話的な要素はいっぱいあったような…」ということがすぐさま思い浮かんだのですが……ここでは、神話の要素を取り入れることに対し議論しているわけではなかったので解決、とします。

すると、なんでしょう…。

ローマ神話も、ギリシャ神話も、実話ではありませんよね。

なんとなくですが、個人的には、ローマ神話やギリシャ神話が起源の例として挙がること自体が不思議と言いますか、なんだか違和感があるのです。

そもそも神話が実話ではないので、それなのにタロットの起源として例になること自体、私にはおかしなことを言っている気がするのです。

伝わりますかね…。

少し極端かも知れませんが〝『遊戯王』という漫画に登場する、キャラクターたちが対戦しあうカードが『タロットカード』の起源だ〟と言っているような印象を受けるんですね。

『遊戯王カード』の起源が『遊戯王』だと言われたら、「そりゃ、そうだろうな」となると思うのですが、『タロットカード』の起源が『遊戯王』だと言われたら「なんだそれ?なんかちょっと違くない?」となりますよね(ならないかな…私にはそのような感覚だったんですよね)。

なので、何故ローマ神話とギリシャ神話が挙げられているのかなぁと不思議なんです。

…この件につきましては、また考察の方で掘り下げていきたいと思います。

ひとまず、まとめに入ります。

まとめ

改めて、今回扱った文章をご紹介します。

The female figure of the eleventh card is said to be Astræa, who personified the same virtue and is represented by the same symbols.
This goddess notwithstanding, and notwithstanding the vulgarian Cupid, the Tarot is not of Roman mythology, or of Greek either.

Arthur Edward Waite
『The Pictorial Key to the Tarot』より

また、これまでの流れも把握できた方がわかりやすいと思うので、前回の結論もお伝えしておきます。

11、正義
タロットが歴史的な古さを帯びていたとしても、太古ほど昔から存在するというわけではなく、もし本当に太古から存在したのであれば、それはもっと古めかしい様式で描けたはずであることが、このカードによって示されている。
この種の事柄において識別の才能を持つ者ならば、年代というものがこの考察の本質では決してないということは言うまでもない――しかし、敢えて例えるなら、フリーメイソンの第三階級における『閉会の儀式』は十八世紀後期のものかも知れないが、その事実には何の意味も持たない――タロットは依然として、制定され、公式に認められたあらゆる秘儀の集大成なのである。

そして、今回のこれまでの訳です(日本語としては不自然でも、なるべく手を加えず、ほぼ文法通りのダイレクトな訳になります)。

→ 11番目のカードの女性像は〝アストレア〟であると言われており、(アストレアは)同じ徳を擬人化し、同じ象徴らによって表されている。

→ この女神はさておき、そして、俗っぽいキューピッドもさておき、タロットはローマ神話のものでも、あるいはギリシャ(神話)のものでもない。

続いて、なるべく本文に忠実に、その上で日本語としてもう少しわかりやすく整えた(当サイト比)訳がこちらです。

11番目のカードの女性像は〝アストレア〟であると言われており、アストレアは「正義」を体現したものであり、同一の象徴らによって表されている。
とは言え、この女神にせよ、あの低俗なキューピッドにせよ、タロットの起源はローマ神話にあるわけでもなければ、ギリシャ神話にあるわけでもない。

今回の最終訳も、直訳とそこまでの差はなかったので、少しでもわかりやすくなるよう軽く整えた程度です。

〝vulgarian〟をどう訳そうか迷っていましたが、過去の記事を見返していると、以前「奇術師」のところで〝vulgar〟という単語を「低俗」としてい扱ったことがありましたので、そのまま採用しました。

今回は、意訳は必要ないかと思います。

最後に〝神話におけるアストレア〟についてと、先程の「何故『タロット』の起源としてローマ神話とギリシャ神話が挙げられるのか」という疑問点について、お話しできればと思います。

ぜひ、最後までお付き合いください。

解説・考察

気持ちとしては、神話としてのアストレアからお話ししたいところなのですが、直接的に本編と関わりあるものではありませんので、まず先に「何故『タロット』の起源としてローマ神話とギリシャ神話が挙げられるのか」という疑問点について考察を述べます。

タロットの起源説にも歴史あり

まず、最終的な見解として〝現代〟と〝当時〟では神話に対する認識が大きく異なっていたという点が挙げられると思います。

先ほどもお伝えしましたが、私にとっては、『神話』は実話ではなくフィクション(つまり誰かが作り出した物語)という認識です。

確かに神話には、事実と思えてしまうほど、歴史的な事柄と繋がりがあるように感じられるものも存在しますが、一般的には歴史的な事実としては扱われていない、というのが現状です。

ですが、これはあくまでも〝現代の視点から見た神話〟であり、ウェイトの時代では、まだそのような視点(扱い)ではなかったそうなのです…。

我々の生きる現代と、ウェイトが生きた1900年頃では、実に130年もの隔たりがあります。

その長いような短いような130年の間には、『神話』に対する認識の移り変わりも見られました。

ウェイトが生きた19世紀末~20世紀初頭のヨーロッパでは、神話が実話であると考えていた学者や知識人が一定数いたそうです。

現代ほど、フィクションとしては見られていなかった、ということになります。

実話そのものとまでではなかったようですが、「実話に基づく可能性がある」「歴史の痕跡がある」と扱われたり、中には古代の何らかの叡智や体系を紐解くための鍵として捉える人もいたのだとか。

そのため当時は、タロットの図像や設定された解釈が神話の内容と似ているだけで、「タロットは神話を起源としているのではないか」と、安直に結び付ける人もいたそうです。

更に同時期のヨーロッパでは、 神話や錬金術、カバラ、占星術など、様々な分野を結び付けながら読み解く〝象徴主義(シンボリズム)〟が大流行していました(まさしく、ウェイト=スミスタロットもその一つです)。

この象徴主義の流行りの中で、 タロットも「古代より伝わる何かしらの象徴体系に違いない」と見立てられ、 神話との関連性を積極的に語られるようになった、ということなのだそうです。

つまるところ、 「タロットの起源が神話にある」という説は歴史的な事実ではなく、当時の風潮によって後付けされた説でしかない、ということなのだと思います。

ここまで来れば、いつも通りですよね。

ウェイトがどのような根拠を基に、「タロットの起源は神話ではない」ということを主張しているのかまではわかりませんが、ウェイトにとっての『タロット』は秘儀の集大成でしたよね(「正義」Vol.1より)。

さすれば、ウェイトにとっての『タロット』の起源は、彼が心血を注いだ神秘主義の秘教なるもの、ということになると思います(これは私の推測で、実際に語られてはいませんからね)。

つまり、「タロットの起源が神話にある」などという誤認識は、ウェイトにとっては許すまじ風潮となるわけです。

当時は、そのような説が実際に流布してしまい、一般的な見解としても多くの人々に受け入れられてしまっていたからこそ、ウェイトは「そんなことがあるものか!けしからん!」と、この風潮を断ち切りたい一心ではなかったのではないでしょうか。

最後になりますが(また、よくお伝えしていることになりますが)、現在では、タロットは元々遊戯あるいは賭博的なカードゲームとして誕生したのが始まりとされています。

現状、ウェイトがタロットの起源を何としているかは明確に語られていませんが、何処かでまた触れられると良いですよね…。

では、「何故『タロット』の起源としてローマ神話とギリシャ神話が挙げられるのか」についての考察は以上となります。

神話としてのアストレア

続きまして、神話としての〝アストレア〟についてお話しをしたいと思います。

…と言いたいところなのですが、実は、アストレアには具体的な物語が存在しないのです。

一通り調べたのですが、個人的には「全部後付けじゃん」という印象でした。

驚きです。

ギリシャ神話のアストレアは、今となっては「正義」や「純潔」を象徴とする女神として知られていますが、調べていると、アストレアにまつわるそのほとんどが後世による後付けだということがわかりました。

てっきり神話らしい、ファンタジー感溢れる話が聞けると期待していたので残念です。

そもそも、語り継がれてきたギリシャ神話の中で〝アストレア〟という名前はもちろんのこと、その姿形がわかるような描写はなかったというのです。

ところで、みなさん。

『ギリシャ神話』と呼ばれる物語がどのくらい存在するか、ご存知でしょうか。

一般的に知られている物語は20~30程だそうですが、あまり有名ではないものも含めますと、優に数百を超えるそうです。

しかし、それほどまでにある物語の何処を辿っても〝アストレア〟という名は登場しません。

これは、古典文献学の権威として知られる Franz Bömer(フランツ・ベーマー)さんという研究者の方の著作でも指摘されていて、神話の研究者の間ではよく知られた見解だそうです。

【参考文献】
Franz Bömer(フランツ・ベーマー)
『P. Ovidius Naso: Metamorphosen』 (1969–1986, Heidelberg)

よって、先程の『アストレアにまつわる変遷』も、後付けされた設定を整理しただけ、ということになってしまいました。(涙)

元々、神話はフィクションであるという認識ですから、もちろん〝アストレア〟というキャラクターが実在しないことは理解しています。

とは言え、そもそもは存在しなかったアストレアを、まさか後世の人たちが、ギリシャ神話で語られた「正義の女神」というたった一節に後から当て込んだなんて、そんな設定誰が見抜けますでしょうか。

…してやられた感があります。

もう何がなんだか、本編よりもアストレアの方ばかりに時間を取られ、ましてや〝後付けだった〟などという結果に終わり、正直どうでも良くなってきてしまいました。

しかし、一度着手したものを中途半端な状態のまま投げ出すのはあまり好ましくありませんので、私なりの解釈をお伝えして、終わりにしたいと思います(お手柔らかにお願いいたします)。

繰り返しになりますが、まず、ギリシャ神話に〝アストレア〟という名前の女神は存在しません。 登場するのは、ただ「正義の女神」という概念的な言葉だけです。

一方で、『アストレアの変遷』でも挙げた、正義を司る女神〝ディケー(Dike)〟の名は明確に登場するとのこと。

つまり、本来のギリシャ神話における「正義の女神」はディケーであり、アストレアではないということになります。

では、アストレアはどこから来たのか?と言いますと、ローマ神話の再解釈によって、初めて 〝Astraea(アストレア)〟という固有名詞が登場したそうです。

そして、その後の人々により――

  • ギリシャ神話の「正義の女神」に当て込まれたり
  • ギリシャ神話とローマ神話を混ぜ合わされたり
  • ディケーと同一視されたり
  • 乙女座と結び付けられたり

と、現在に至る〝アストレア像〟が作り上げられた、ということになるのでしょう。

また、当時の政治的な都合により生み出されたという意見もありました。

ちなみに…文句ではないのですが、日本語のサイトではアストレアについての情報があまりにも概要的なもの、あるいは物語の紹介ばかりで、成り立ちに触れているものは出てきた順番に20件ほど確認しましたが一つもありませんでした(ゲームやアニメなどのキャラクター情報を除く)。そのため、海外のサイトを参考にしました(英語ができるわけでもないのに)。

正直なところ、ゼウスやヘラといった王道たる神様のような設定がないからこそ、ここまで曖昧な出自になってしまったのだろうなと思います。

言ってしまえば〝好き放題〟に設定できるということになりますからね。

ただ個人的には、今回はただただ後世の人々に振り回されただけのような気がして、酷く虚しいです…。

何一つとして得られなかったわけではないですが、感情的には「何の成果も!!得られませんでした!!」というお気持ちです。

結果として、〝ギリシャ神話でのアストレアの設定〟についてお話しするだけということになってしまいましたね(すみません…)。

次からは(また神話に関する内容を扱う際には)、真っ先に神話から調べることにしますね。

あぁ、アストレア…。

ギリシャ神話の女神、正義を司るアストレアが天秤を持ち、金色の光に包まれて古代神殿の前に立つ姿

私が思い描いたアストレアは何処へ…。

あれ?

ところで、私はどうしてアストレアについて調べていたんでしたっけ…。

まっ、いいか。今回はここまでにしましょう。

最後まで見てくださり、ありがとうございました。

また次回、お会いしましょう。

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