『The Pictorial Key to the Tarot(§2 TRUMPS MAJOR)』翻訳・解読【教皇】
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こんにちは。
『タロットの世界』へお越しくださり、ありがとうございます。
今回は、マルセイユタロット5番――

(ニコラ・コンヴェル版/グリモー版)
「教皇」のカードを扱うはずだったのですが…期待していた内容は語られず、これまで通りです。(笑)
最初にお伝えしておきたいのですが、今回の内容、物凄く難しかったです。
いえ、内容そのものはそうでもないのですが、使われている単語に対する日本語のボキャブラリーの少なさと言いましょうか、段々と自分でも何を言っているのかわからなくなるほど、「日本語が足りない!」という体験をさせてもらいました。
生きていると、こんなこともあるんですね。
日本語は語彙が多いものだと思っていましたが(それは間違いではないはずですが)、インターネットなんかで調べで出てくる単語が100%正しいわけではない(というか足りてない)ということを、改めて実感させられた回でした。
というわけで、どうか肩の力を抜いて、お茶やおやつなんぞをご用意の上、ゆるりと読んでいただければと思います。
恐らく一度では内容が入ってこないかも知れませんので、その際はぜひ繰り返し読み直してみてください。
それでは、本題へ参りましょう。
前回の記事はこちら
もくじ
今回の文章:ウェイトが語る「教皇」の原初的な意味
今回の文章です。
5. The High Priest or Hierophant, called also Spiritual Father, and more commonly and obviously the Pope.
It seems even to have been named the Abbot, and then its corres-pondence, the High Priestess, was the Abbess or Mother of the Convent.
Both are arbitrary names.
The insignia of the figures are papal, and in such case the High Priestess is and can be only the Church, to whom Pope and priests are married by the spiritual rite of ordination.
I think, however, that in its primitive form this card did not represent the Roman Pontiff.
本文をそのまま引用しています。赤字の部分は改行時に使用されるハイフン(-)で間違いではありません。ハイフンを除いたものが元の単語になります。
Arthur Edward Waite
『The Pictorial Key to the Tarot』より
全部で5つありますが、3つ目の文章は短いので、2つ目のと一緒に見ていきます。
今回も一度に全部見ていきます!!
では、よろしくお願いいたします。
一文目:当時のマルセイユタロット「教皇」の呼称
では、一つ目の〝5. The High Priest or Hierophant, called also Spiritual Father, and more commonly and obviously the Pope.〟を見ていきます。
まずは単語のチェックから始めましょう。
・High Priest → 司祭長(高位の司祭?)
・Hierophant → 秘教/秘儀の解説者、祭司
・more commonly → より一般的に
・obviously → 明らかに、誰にでもわかるように
・Pope → 法王
※ここでは代表的なものを挙げています。
最初は〝5. The High Priest or Hierophant, called also Spiritual Father〟ですが、こちらは「5、「高位の司祭」、または「祭司」、あるいは「霊的な父」とも呼ばれ…」というような意味です。
ちょっと弱気で申し訳ないのですが、ここに来て、私自身もウェイト=スミスタロット5番のカードを「司祭」と呼ぶことが適切なのかを迷ってしまいました…。
単語リストには一般的な意味を掲載していますが、当サイトにおいてですが、私なりに単語の違いを明確にしておきたいので、本編に入る前に少し解説をさせてください。
- High Priest
「司祭長」と出てくることが多いのですが、ウェイト=スミスタロットの3番〝High Priestess〟を「高位の女司祭」と読むのなら、〝High Priest〟は「高位の司祭」とするのが適切だと考えます。 - Hierophant
以前、細かい点まで触れているので、こちらの記事もご覧いただけると理解が深まると思います(▶▶ こちら)。
現状、私の認識では「法王」というのは日本独自の表現だという理解で、本来〝Hierophant〟を「法王」と呼ぶのは適切ではないと感じています。そのため、当サイトでは、ウェイト=スミスタロット5番に名付けられているこの〝Hierophant〟を「司祭」と呼ぶことにしています。
しかし、厳密な日本語としては「祭司」を指す語だそうで、キリスト教に限らず儀礼などを執り行う者や秘儀や伝統を伝える者を意味するそうです。
念のため、ここでは区別を付けるため且つ便宜上「祭司」と訳しますが、基本的には「司祭」と認識していただいて差し支えないと思います。
少しややこしいかも知れませんが、また『まとめ』の方でも詳細をお伝えしていますので、そちらも併せてご覧いただけますと幸いです。 - Pope
こちらは、キリスト教カトリックのローマ教皇そのものを指す語です。ところが、本文では後に〝Roman Pontiff〟という、より明確で直接的な「ローマ教皇」を表す語が登場します。もし本当に、「教皇」そのものを指したいのであれば〝pontiff〟を用いると思うのです。先に「法王」と呼ぶのは日本独自の表現だとお伝えしましたが、ここでは〝pope〟と〝pontiff〟の違いを明確にするため、敢えて「法王」と訳すことにします。
続いて〝and more commonly and obviously the Pope〟とありまして、こちらが「そして、より一般的且つ明らかには「法王」(と呼ばれる)」というような意味になります。
「一般的でわかりやすい呼び方としては「法王」がある」という意味だと思います。
一度まとめてみましょう。
〝5. The High Priest or Hierophant, called also Spiritual Father, and more commonly and obviously the Pope.〟
→ 5、「高位の司祭」、または「祭司」、あるいは「霊的な父」とも呼ばれ、一般的でわかりやすい呼び方は「法王」です。
内容は伝わりますよね。
5枚目にして、「奇術師」を思い出させる始まり方となりました。
続きはどんなことが語られているのでしょうか。
先へ進みます。
二文目、三文目:過去とはいつのことなのか――呼称から時系列を探る
次は〝It seems even to have been named the Abbot, and then its correspondence, the High Priestess, was the Abbess or Mother of the Convent.〟と〝Both are arbitrary names.〟です。
単語や熟語の整理から行います。
・even → ~でさえ
・to have been named → (以前に)~と名付けられていたようだ
・the Abbot → 男性の修道院長
・the Abbess → 女性の修道院長
・Mother of the Convent → 修道院の母(こちらも修道院長)
・arbitrary → 恣意的な、根拠のない
※ここでは代表的なものを挙げています。
では、まず〝It seems even to have been named the Abbot〟ですが、こちらが「それは「男性の修道院長」と呼ばれていたことさえあるようだ」というような意味です。
〝even〟には、意外性や驚きというニュアンスがあるそうです。
続いて〝and then its correspondence, the High Priestess〟ですは、こちらが「それから、それの対応関係にある「高位の女司祭」」というような意味です。
そして〝was the Abbess or Mother of the Convent〟とありまして、こちらが「「女性の修道院長」または「修道院の母」」というような意味です。
立て続けに、呼称が並べられているようですね。
そして、三つ目の文章〝Both are arbitrary names〟ですが、こちらが「どちらも恣意的な呼称である」というような意味でしょう。
なるほど、なるほど。
一度まとめてみますね。
〝It seems even to have been named the Abbot, and then its correspondence, the High Priestess, was the Abbess or Mother of the Convent.〟
→ それは「修道院長(男性)」と呼ばれていたことさえあるようだ。そして、それの対応関係にある「高位の女司祭」は、「修道院長(女性)」あるいは「修道院の母」であった。
〝Both are arbitrary names.〟
→ どちらも恣意的な呼称である。
こちらも内容は理解できますよね。
実際は英語ですから、もしかすると呼称自体は訳す必要はなかったかも知れませんが、まぁ良しとしましょう。
しかしながら、本来であればマルセイユタロットの「教皇」の話をしているはずなのですが…まぁ、その件についてはともかく、マルセイユタロットは元から「教皇」と「女教皇」という名称だったはずです。
ウェイトの時代には、まだヴィスコンティタロットは発見されていませんでした。それでも、後に発見されたヴィスコンティタロットには「教皇」と「女教皇」のカードが現存します(ちなみに現存するのはピアポント・モルガン・ベルガモ版のみです)。正式な名称こそ描かれてはいないものの、最古のマルセイユタロットが制作されたとされる年より100年以上も前には存在し、後のマルセイユタロットもほとんどが「教皇(LE PAPE)」と「女教皇(LA PAPESSE)」という名称です。『The Pictorial Key to the Tarot』が出版された当時、ウェイトはまだこの事実を知ることができませんでした。
正式な名称が描かれていないとはお伝えしましたが、カードに描かれた内容から「教皇」「女教皇」とされ、タロット(カード)史研究の分野では長年そのように扱われてきました(これは私の一方的な主張ではなく、歴史的な理解として定着していることですからね)。
ですから、やはり「祭司、改め司祭(The Hierophant)」や「高位の女司祭(The High Priestess)」というカードの呼び名は、ウェイト=スミスタロット以降付けられた名称と見なすのが自然でしょう。
また以前、ウェイトは自身のタロット2番「高位の女司祭」のカードに、〝教会〟との結び付きを示唆させる内容を語っていたこともありました。
個人的には、ウェイトがこの「高位の女司祭」というカードに、特別なストーリー性を盛り込みたいのかなと感じています。
また、ここで挙げられている各呼称(Abbot/Abbess/Mother of the Convent)は、恐らく、18世紀の Court de Gébelin(コート・ド・ジェブラン)の著作『原始世界(Le Monde primitif)』第8巻『タロット論』から来ているものだと考えられます。ただし、実際のタロット史において広く用いられていた名称ではなく、コート・ド・ジェブランの解釈の中で提示されていたものと言った方が適切かと思います。
ちなみに、このコート・ド・ジェブランについて以前にも触れたことがあるのですが、覚えていらっしゃいますでしょうか。
そうです、「タロットの起源はエジプトにあり!!」と説いた人物です(タロットの起源はイタリアです)。
本来なら、ウェイトが認めないタイプの人物だと思うのですが、自身の理論を展開するために必要なものは取り込むということは厭わないということなのでしょうか…。
悪く言うつもりではないのですが、ウェイトはウェイトで、語られている内容のほとんどが恣意的だと言っても過言ではない気がします。
もはや、当時のマルセイユタロットの解釈を知りたいのであれば、Eliphas Levi(エリファス・レヴィ)を辿るのが一番の近道かも知れませんね。
では、次へ進めていきましょう。
四文目:「高位の女司祭」=〝教会〟なのか
四文目は〝The insignia of the figures are papal, and in such case the High Priestess is and can be only the Church, to whom Pope and priests are married by the spiritual rite of ordination.〟です。
また単語等の整理から行っていきましょう。
・figures → 人物
・papal → 教皇に関する
・in such case → そのような場合には、その前提なら
・whom → ~に、~を、~に対し(目的語)
・spiritual rite → 霊的な儀式/習慣
・ordination → 叙階式
※ここでは代表的なものを挙げています。
まず〝The insignia of the figures are papal〟ですが、こちらは「その人物たちの徽章は教皇に関するもののようだ」というような意味です。
続いて〝and in such case〟とあり、こちらが「そして、そのような場合には」という意味ですね。
次に〝the High Priestess is and can be only the Church〟とありまして、こちらが「「高位の女司祭」は教会であり、そして「高位の女司祭」であるのは唯一教会だけである」というような意味です。
〝is and can be only〟というフレーズは、「~であり(is)、~であるのは唯一~だ(can be only)」という強い限定を表す言葉だそうなのですが、直訳にしますと、かえってわかりづらくなってしまいますよね。
要は、「高位の女司祭」は〝教会〟以外にあり得ない!!というようなことを強く主張しているということです。
ということで、先ほどお伝えしたことが、すぐ出てきてしまいましたね(「高位の女司祭」を教会を結び付けようとすること)。
そして〝to whom Pope and priests are married〟とありますが、こちらが「(その教会)に対し、教皇と司祭たちは結婚した」というような意味でしょうか。
ウェイトはここで、教会を人間のように例えていますね。
また、この〝are married(結婚した)〟というのは、普通の結婚を指しているわけではなく精神的な結び付きを表しているのだと思います。
教皇と司祭がではなく、教会と教皇/教会と司祭たち、という関係性ですね。
それから、最後に〝by the spiritual rite of ordination〟とありまして、こちらが「叙階という霊的な儀式によって」という意味でしょう。
ちょっと何を言っているのか意味がわかりませんね(わかりましたか?)。
一度まとめてみましょう。
〝The insignia of the figures are papal, and in such case the High Priestess is and can be only the Church, to whom Pope and priests are married by the spiritual rite of ordination.〟
→ その人物たちの徽章は教皇に関するものであり、そしてそのような場合は「高位の女司祭」は教会であり、そして「高位の女司祭」であるのは唯一教会だけである、(その教会)に対し教皇と司祭たちは叙階という霊的な儀式によって結婚している
一応、文法を優先した直訳寄りにしたつもりなのですが、いいかがでしょう。
まだ途中なのであれですが、一応ここは「教皇」の説明をしてくれる場でしたよね。(笑)
「教皇」という単語は出てくるものの、自身の「司祭」を説明するでもなく、中心は「高位の女司祭」ですよね…。
私事になりますが、私がまだタロットの何も知らなかった頃、なんとなく手に持ったカードから1枚引いて、出たカードから学ぼうとしていた時があったのですね。
そして、最初に引いたカードが「司祭」のカードだったのです。
当時の私は「へ?何このカード。教皇(当時は「教皇」という理解でした)?何それ?」という気持ちで、「そもそも教皇って何?」というところから、かなり調べていったんですね。
私はこれまで宗教にはほとんど縁がなかったものですから、本当に「教皇」という言葉の意味すら、説明できるほどの知識も持ち合わせていませんでした。
ところが何が功を奏したのか、何故かそこから歴史にも興味を持つようになり(主に世界史ですが)、何故か「タロットって面白いかも!?」と思う一助にもなりました。
ちなみになんですが、みなさん〝十字架〟ってめーちゃくちゃ種類があるの知っていましたか?
余談になりますが、世界に自分の知らないことなんてたくさんあるというのはわかることではあるのですが、身を以って体感――「面白い!!」と思ってしまった瞬間だったのです。
そうした経緯があり、なんとなく私は「教皇」改め「司祭」には縁を感じてしまうのです。
要するに、私も「教皇」改め「司祭」のカードに付けられた内容を知りたかったのですが…残念です。
やはり〝当時の〟と言いますか、伝統的な、あるいは代表的なと言っても過言ではないかも知れません。そのようなタロットの解釈を知りたい場合には、エリファス・レヴィを辿るのが一番かも知れませんね(2回目)。
では、最後の文章を見ていきましょう。
五文目:「教皇」のカードは〝ローマ教皇〟を描いたものではない?
最後は〝I think, however, that in its primitive form this card did not represent the Roman Pontiff.〟です。
知らない単語がなかったので、このまま進めます。
まず〝I think, however, that〟ですが、こちらは「私は~だと、思う、しかし(とは言え)」という意味です。
次に〝in its primitive form〟とありまして、こちらは「それの原始的な形態において」というような意味で、「初期の姿/形」というようなことを言っていると思います。
そして、最後の〝this card did not represent the Roman Pontiff〟ですが、こちらが「このカードはローマ教皇を表していなかった」というような意味です。
さぁ、繋げてみましょう。
〝I think, however, that in its primitive form this card did not represent the Roman Pontiff.〟
→ 私は思う、とは言え、それの原始的な形態において、このカードはローマ教皇を表していなかったということ
はっきりと断言はできませんが、以前ウェイトが「ローマ教皇」について触れていた際、「ウェイトはキリスト教徒であるにも関わらず、ローマ教皇、あるいは制度的なものを良く思っていないのかな?」と感じられる文がありました(▶▶ こちら)。
一般的に「教皇」と言えば、歴史的にも宗教的にもローマ教皇のことを指すと思いますが、ウェイトには少し違う観点があるように思われます。
どちらかと言えば「権威」や「制度的な権力」といったものを表す語として使っている節があり、そのためか、それが打ち砕かれる様子を「塔」のカードに取り込んでいたと記憶しています。
こうした背景を踏まえますと、ウェイトがこれまでにあった「教皇」というカードを廃止し、「祭司、改め司祭」という新しい名称を自身のタロットに取り入れたのも、単なる名称変更ではなく、ウェイト自身の思想や宗教観を反映したかったからなのかなと思いました。
では、まとめに入りたいと思います(上手くまとめられるかな…)。
まとめ
改めて、今回扱った文章をご紹介します。
5. The High Priest or Hierophant, called also Spiritual Father, and more commonly and obviously the Pope.
It seems even to have been named the Abbot, and then its corres-pondence, the High Priestess, was the Abbess or Mother of the Convent.
Both are arbitrary names.
The insignia of the figures are papal, and in such case the High Priestess is and can be only the Church, to whom Pope and priests are married by the spiritual rite of ordination.
I think, however, that in its primitive form this card did not represent the Roman Pontiff.
Arthur Edward Waite
『The Pictorial Key to the Tarot』より
また、これまでの流れも把握できた方がわかりやすいと思うので、前回の結論もお伝えしておきます。
4、「皇帝」は前者(女帝)の配偶者と見なすことができる。
彼は時に、自身の徽章に加え、騎士団の星章やリボンを身に着けた姿で描かれることがある。
私がこれについて言及するのは、どのカードであっても、古い象徴と新しい象徴の混在であるということを示すためである。
一方の証拠を強く主張する者――それが可能ならば、もう一方の証拠も扱うことができるだろう。
古い素材を取り入れている事実があるからといって、その図像の歴史を証明する有効な論拠が導き出されることはなく、同様に、散発的な新奇さや、理解のない編集者や後世の制作者による介入があっても、そこから導き出される有効な論拠は存在しない。
そして、今回のこれまでの訳です(多少不自然でも、なるべく原文に手を加えずダイレクトに訳したものになります)。
→ 5、「高位の司祭」、または「祭司」、あるいは「霊的な父」とも呼ばれ、一般的でわかりやすい呼び方は「法王」です。
→ それは「修道院長(男性)」と呼ばれていたことさえあるようだ。そして、それの対応関係にある「高位の女司祭」は、「修道院長(女性)」あるいは「修道院の母」であった。
→ どちらも恣意的な呼称である。
→ その人物たちの徽章は教皇に関するものであり、そしてそのような場合は「高位の女司祭」は教会であり、そして「高位の女司祭」であるのは唯一教会だけである、(その教会)に対し教皇と司祭たちは叙階という霊的な儀式によって結婚している
→ 私は思う、とは言えそれの原始的な形態において、このカードはローマ教皇を表していなかったということ
最後に、本文の内容をより忠実に整えた(当サイト比)訳がこちらです。
5、「高位の司祭」、あるいは「祭司」、または「霊的な父」とも呼ばれ、そして一般的且つより明白な呼び方は「法王」である。
それは「修道院長(男性)」と呼ばれていたことさえあるようで、そしてそれと対応関係にある「高位の女司祭」は、「修道院長(女性)」あるいは「修道院の母」とされていたようだ。
いずれも恣意的な名称である。
その人物たちの徽章は教皇に関するものであり、その場合「高位の女司祭」は教会そのものであり、それ(教会)に対し「法王」や「司祭」は叙階という霊的な儀式により結び付けられています。
しかしながら、私は、このカードの初期の形態においては、ローマ教皇を表していたわけではないと考えます。
道中で解説を交えてきたので、そこまで改変しなくても内容は伝わると思い、このような訳にしました。
やはり、ウェイトの中では「法王(教皇)」と「ローマ教皇」は別の扱いのように感じられます。
と言いますか、正直、今回の訳を進める中で、こうした微妙な違いが日本語ではまだまだ訳し切れていないのだという現実にぶち当たった気がします。
日本的(日本語的?)な感覚であれば、恐らく〝Pope〟も〝Pontiff〟も「教皇」で正解なのだと思います。
ですが、実際に使われている単語は違うわけですから、本来は同じものを意味しているとは考えにくいです。
ましてや英語の本場、アメリカで生まれ、幼少期にイギリスへ渡った人物且つ、言葉一つひとつにこれほどまでに含みを持たせるウェイトです。
しかし、日本語にするとやはり「教皇」や「法王」といった表現の他になく、何故かそれは違う言葉なのに同じものを指します。
ということで、非常に面倒…と言ってしまうと語弊がありますが、口頭ならまだしも、こうして文章にするとなると非常に難解な回でした。
今回は、かなり細かなところにまで足を踏み入れてしまったような気がします。満身創痍です。
何回も読み直しているのですが、読み直す度に追記していて、もしかすると道中「矛盾してない?」というような点があるかも知れませんが、大目に見ていただけると助かります。(よろしくお願いいたします)。
最後に本文の簡単な解説と、「祭司」と「祭司」の違いについてお話しして終わりにしたいと思います。
解説・考察
今回の要点として…
- 「教皇」のカードのさまざな呼称を取り合げるが、それを「恣意的」と一蹴りしつつ…
- そこに描かれる人物が身に着ける徽章が教皇に繋がるものである場合は、「高位の女司祭」は〝教会〟を表し、そしてその教会と「法王」もしくは「司祭」は結婚しているという表現で深い結び付きを示唆
- ウェイトは最初から「教皇」のカードは〝ローマ教皇〟を描いたものではないと語る
という点はご理解いただけたかと思います。
それに加え、「叙階という霊的な儀式」について触れておきます。
「叙階」とは、キリスト教カトリックにおいて司祭や司教などの聖職者を任命するための儀式を指します。 この儀式によって、正式に〝教会に属する者〟として位置付けられるそうです。
ウェイトはそれを「結婚している」という表現を用いています。
「祭司」と「司祭」の違いについて
ここに来て気付いたことなのですが…現在、日本語的には一般的なタロットカードの大アルカナ5番は「教皇/法王/司祭」という呼び方があると思います。
個人的には、もう「法王」と呼ぶのは違うかなという認識ですが、これまでの訳を進める中で「教皇」と「司祭」の違いを知り、基本的にはマルセイユタロットの5番は「教皇」、ウェイト=スミスタロットの5番は「司祭」と呼ぶことにしていました。
このことに変わりがあるわけではないのですが、今回の文章を扱っていて「あれ?実は、ウェイト的には「司祭」と「祭司」を分けているんじゃないかな?」と感じてしまいました。
一文ずつ進めているので最初は気付かなかったのですが、一文目ではそれぞれの単語の違いについてさっと説明し、その際は〝hierophant〟を「祭司」としました。加えて、訳では「司祭」という認識で差し支えなだろうということもお伝えしました。
しかし後半、四文目には〝priest(s)〟=「司祭」という単語が出てきました。 つまり、これは作者が「祭司」と「司祭」を明確に使い分けていることになります。個人的には見過ごせるものではありません。
ちなみに〝タロット 祭司〟と検索しても、「祭司」と出てくることはほとんどありません。
「大祭司」という語でなら出てくるので、もしかするとこの違いに気付いている方、もしくは知っている方なのかも知れないと思い覗いてみたのですが、この件に関する情報があるというわけでもなく、実際のところはよくわかりません。
ただ、私個人としましては、作者本人が明確に違う表現をしている以上、もしかすると本来は5番を「祭司」と呼ぶのが適切だったのでは?という考えも浮かんでしまいます。
ウェイト的に、〝hierophant〟は本当は「祭司」を意味する語なんだけど、実際、日本では覆しようがないほど「司祭(または教皇/法王)」という名前が広がってしまった。だから「司祭」のまま来てしまったという可能性も考えられなくはないと思います。
日本語以外のことはわかりませんが、これまでに読まれていた正しいとされる日本語が、気付けば間違った読み方でも正解とされていたり、例えば〝雰囲気〟は「ふんいき」ですが、言葉にすると「ふいんき」として語る人が大半だったり。〝多い=正解〟という風習がそうさせてしまったのかも知れない…というのが一つ、私の考えです。
みなさんはどのように感じられましたでしょうか。
ここで、せっかく「祭司」という言葉を知り、多少でも両者の意味は違うということを知りましたので、そのことについてお話しさせてください。
祭司(hierophant)
・特定の宗教に限らず、祭儀や宗教的な儀式を執り行う
・秘伝や秘儀を伝える者(解説者、伝道師)
・ギリシャ語で「聖なるものを示す者」という意味
・古代ギリシャのエレウシスという都市で行われた宗教儀式では、神秘を啓示する祭司の称号だった
「祭司」は宗教的な儀式を司る人物全般(広義/抽象的)
全然関係ないのですが、いつも「ギリシャ」とするか「ギリシア」としようか迷います…。
司祭(priest)
・キリスト教(特にカトリックや正教会)における聖職者の位階の一つ
・叙階によって任命され、宗教的な儀式を執り行う
「司祭」はキリスト教における正式な聖職者の位階(狭義/制度的)
このような違いがあります。
あくまで一つの解釈に過ぎませんが――ウェイトが熱心なキリスト教信仰者というのはみなさんもご存知のことかと思います。ですが、これまでの内容を思い返してみると、どちらかと言うとウェイトはこの「司祭」が表す制度的なものにはやや批判的な面があるかと思います。
まだ、ウェイト=スミスタロット5番「祭司、改め司祭」のカード自体の紹介欄に辿り着いていないため、どのようなことが描かれているのかはわかりませんが、個人的にはウェイトが好みそうなのは「祭司」の方ではないかと思いました。
ですが、「実際の絵を見るとやっぱり教皇っぽいんだよなぁ~」とは思います。

右:ウェイト=スミスタロット「司祭」
ただし、どんなに〝祭司〟と調べてみても、司祭ばかり出てきてしまい、また〝hierophant〟と調べても、このウェイト=スミスタロットの「司祭」ばかり出てきてしまうので、この件をはっきりさせるには根気が必要そうです…。
一考察として受け止めていただけましたら幸いです。
では、今回は以上になります。
月並みな言葉になりますが、いつも見てくださってありがとうございます。
段々と年末ですね。
体調等崩さず、元気にお過ごしくださいね。
では、また次回。
次回は「恋人」のカードになります(次回は長いので分けてお伝えしますね)。

