『The Pictorial Key to the Tarot(§2 TRUMPS MAJOR)』翻訳・解読【隠者】Vol.4 ~四大枢要徳 正義~

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こんにちは。

『タロットの世界』へお越しくださり、ありがとうございます。

この記事から当サイトにお越しくださったという方は、そう多くはないと思うのですが……残念ながら、当記事(と言いますか『The Pictorial Key to the Tarot』の§2)ではマルセイユタロットの「隠者」についてほとんど語られることはありません。

訳者である私自身もそれを楽しみにしていたのですが、これまでは当時主流だった解釈を挙げるも批判し、ここからはウェイトによる『四つの枢要徳』という概念を再表現した解説がひたすら続くようです。

私自身『四つの枢要徳』という言葉自体初めて聞いたものですから、普通に興味があるのですが、もしタロットの〝占い的な解釈〟を期待して訪れてくださった方であれば、少し戸惑われるかも知れません。

……ここから先は、別次元の話が始まるのです。

それでも、もし宜しければこのまま(あるいはもう少し前の記事から)読んでいただけると私も嬉しいのですが、根本的に巷で言われているような『タロットの解説』という内容ではありませんこと、ご了承ください。

ですが、私が知る限りでは、日本語ベースでここまで解説しているサイトは見たことがないので、きっと何かしらお力になれることもあるのではないかと思います。

ウェイトが再表現した『四つの枢要徳』について、少しずつ読み解いていきたいと思います。

不慣れな単語が多く登場し、きっと難解な作業になると思っています……。

心してかかりましょう!!

では、一息つけるお茶やお菓子をご用意の上、ごゆるりとご覧ください。

前回の記事はこちら

『The Pictorial Key to the Tarot(§2 TRUMPS MAJOR)』日本語訳|マルセイユタロット【隠者】Vol.3 | タロットの世界

エリファス・レヴィの象徴体系への批判から、一般大衆向けの浅い解釈を退け、四大枢要徳を再定義しようとするウェイトの意図を読み解きます。1910年当時の背景や難解な代…

今回の文章:超越的な正義と悪魔との大勝負――天秤が示す究極の真理

今回扱う文章はこちらです。

(a) Transcendental Justice, the counter-equilibrium of the scales, when they have been overweighted so that they dip heavily on the side of God.

The corresponding counsel is to use loaded dice when you play for high stakes with Diabolus.

The axiom is Aut Deus, aut nihil.

※原文にある改行時に用いられるハイフン(-)は省略しています。

Arthur Edward Waite
『The Pictorial Key to the Tarot』より

また、念のため今回から語られる『四つの枢要徳』について、軽くおさらいをしておきたいと思います。

四大枢要徳とは

  • 思慮(Prudence):よく考えて正しい判断をする力。
  • 正義(Justice):人に公平に接し、約束や義務を守ること。
  • 剛毅(Fortitude):困難や恐れに負けずに立ち向かう強さ。
  • 節制(Temperance):欲望や感情を抑えて、バランスを保つこと。

これらのどれもがタロットの大アルカナに用いられている名称ですが、そもそもは古代ギリシャの哲学からキリスト教の倫理論に取り入れられた〝人間の徳の基本となる四つの徳〟のことを指します。

左から「力」「隠者」「正義」「節制」のカード。上段にウェイト=スミスタロット、下段にマルセイユタロット、四大枢要徳を表している。
左から「力」「隠者」「正義」「節制」
上段:ウェイト=スミスタロット
下段:マルセイユタロット

ウェイトが「再表現」と称し、自らの解釈を語るまでは、主に Court de Gébelin(コート・ド・ジェブラン)や Éliphas Lévi(エリファス・レヴィ)の解釈が一般的とされていたと考えられます。

『四つの枢要徳』をタロットに取り入れたのはエリファス・レヴィが最初だとされていますが、前回、ウェイトはこの取り入れられた経緯について批判していました。

エリファス・レヴィは、あくまで『四つの枢要徳』を基準とし、たまたま「思慮」というポストが空いていたため、それを埋めたいがために「隠者」を割り当てただけに過ぎないと述べ、それは「隠者」の理解でもなければ、本来の『四つの枢要徳』の理解でもなく、浅い表面的な解釈をなぞっただけに過ぎないと指摘しました。

そこで、ウェイト自身による、本来の『四つの枢要徳(の再表現)』がこれから語られるというわけです。

明確な記述はされていませんが、本来マルセイユタロットの8番目である「正義」ではなく、自身のタロットの8番目である「力」を掲げ、そこでは本来ウェイト=スミスタロットの「力」の名称である〝strength〟は用いらず「剛毅」を意味する〝Fortitude〟を用いていた辺り、ウェイトは最初からこの再表現を語ることを目的として意図的に自身のカードを8番目に持ってきたかのように思えます(本来なら「マルセイユタロットの紹介」と言っていたので「正義」でないとおかしいのですが…)。

少し前置きが長くなりましたが、ウェイト=スミスタロットを理解する上でも、Arthur Edward Waite(アーサー・エドワード・ウェイト)という人物像を掴む上でも、ここは知っておいて損のないポイントだと思います。

では、よろしくお願いいたします。

一文目:超越的な正義――神の側へ大きく傾く逆均衡

最初は〝(a) Transcendental Justice, the counter-equilibrium of the scales, when they have been overweighted so that they dip heavily on the side of God.〟を見ていきたいと思います。

まずは単語等の整理から始めたいと思います。

transcendental → 超越的な、霊的な高い次元
counter-equilibrium → 本来の均衡とは逆方向のバランス、反対側に偏った均衡
counter → 逆の、対抗する
equilibrium → 均衡、釣り合い
scales → 天秤
overweighted → 過剰に重みを加えた/かけられた
dip → 沈む

※ここでは一般的なものを挙げています。

〝counter-equilibrium〟は「カウンターエクイリブリアム」というような読み方だそうです。とても言いづらいです。

では、まず〝(a) Transcendental Justice〟ですが、こちらは「超越的な正義」というような意味です。

あの…念のためお伝えしておきますが、あくまでここは「隠者」の解説欄に設けられた文章ですからね。(笑)

『四つの枢要徳』を再表現すると述べたウェイトの解説が始まったわけなのですが、この部分だけを見ると、まるで「正義」のカードの解説にも感じられなくありません。

ですが、実際には「隠者」の中で語られている『四つの枢要徳』の解説の一文目ということになります(お間違いなく)。

次に〝the counter-equilibrium of the scales〟とありますが、「それは天秤の逆均衡」というような意味になるかと思います。

続く〝when they have been overweighted〟ですが、こちらが「それらに過剰な重みが加えられている時」というような意味です。

ここは〝have been〟とありますので、「過去に過剰な重みを加えられたままずっとその状態」というような意味なのだと思います。

そして〝so that they dip heavily on the side of God〟ですが、こちらは「その結果、それらが神の側へぐっと沈み込む」というような意味でしょうか。

一度まとめてみましょう。

〝(a) Transcendental Justice, the counter-equilibrium of the scales, when they have been overweighted so that they dip heavily on the side of God.〟

→ (a)超越的な正義、それは天秤の逆均衡であり、それらに過剰な重みが加えられた時、それらが神の側へぐっと沈み込む。

このような形でしょうか。

いつも通り、まずは直訳寄りにしましたが、補足として少し説明をさせてください。

本来私たちが思う天秤というのは、左右が均等になっていてこそ「バランスが取れている」と感じますよね。もしくは50:50であることこそ正義のように感じることもあります。

しかし、ウェイトは「神の側へ極端に傾くことこそ、真のバランス(超越的な正義)なのである!!」というようなことを言っているのです。

私、この一文すごい好きです。「なるほど」と思わされてしまいました。

続きがとても気になります。

では、次に進めてみましょう。

二文目:一世一代の大勝負の助言

二つ目の文章は〝The corresponding counsel is to use loaded dice when you play for high stakes with Diabolus.〟です。

なんだか面白そうな文章に見えるのですが、使われている単語のほとんどがわかりません。いつも通りチェックしていきます。(泣)

corresponding → 対応する、関連する
loaded dice → いかさまのサイコロ(重りが仕込まれている)
high stakes → 大きな賭け、重大な勝負事
diabolus → 悪魔(ラテン語)

※ここでは代表的なものを挙げています。

前回は〝correlatives〟という単語の「対応する(相関的な)」だったのですが、今回は〝corresponding〟という「対応する」なんですね。

若干綴りは似ていますが、内容は全く異なるようです。

  • correlatives  → AがあればBがある、というような関係(相関)
    詳細は前回の記事をご覧いただきたいですが、『四つの枢要徳』と『完全さへの助言』の関係のような「対応」を指します。
  • corresponding  → AにはBが当てはまる、というような関係(応じる)
    例えば、前文の「超越的な正義」という考え方に対し、具体的な策(これから語られます)を当てはめるような適合や一致という「対応」を指します。

では、見ていきましょう。

まず〝The corresponding counsel is〟ですが、こちらは「それに対応する助言は~です」というような意味です。

続いて〝to use loaded dice〟ですが、こちらは「いかさまのサイコロを使うこと」という意味です。

それから〝when you play for high stakes〟ですが、こちらが「あなたが大きな賭けをする時に」というような意味かと思います。

そして、最後に〝with Diabolus〟とありまして、こちらが「悪魔相手に」というような意味になります。

文章を分けてしまったのでわかりづらくなってしまったかも知れませんが、英語で〝play (for high stakes)with〟とされる際、それは「~と一緒に」という意味ではなく、「対戦相手」というような意味になるそうです。

私はずっと「悪魔と一緒に」だと思っていて、なかなか意味がわからなかったです。

また、以前「ディアボロス」に触れた時はギリシャ語の方を(diabolos)をお伝えしたのですが、ラテン語の〝diabolus〟も同様に、〝最悪最強〟とされる「悪魔」のことです。

歴史的な順番としては、ギリシャ語の方がラテン語より数百年も古くからあるようなのですが、ウェイトは敢えてラテン語を選択していると考えられます。
ラテン語は、かつてのキリスト系の教会の公用語でもありましたが(ウェイト自身がキリスト教徒なのです)、どちらかと言うと、ラテン語を使うことにより格式や権威性が高まるため、それを狙ってのことだと思います。

では、一度まとめてみましょう。

〝The corresponding counsel is to use loaded dice when you play for high stakes with Diabolus.〟

→ それに対応する助言は、あなたが悪魔相手に大きな賭けをする時に、いかさまのサイコロを使うことである。

お~~~!!

なんだか自分で訳していながら、「おぉ~!!」と腑に落ちてしまいました。

みなさんにもきちんとお伝えすることができているでしょうか…。

つまるところ、「最悪最強の悪魔と戦うような大きな勝負事(一世一代の大勝負的な?)をする際には、なりふり構わずいかさましても勝て!!」というようなことを言っていますよね。

これは面白いですね!!(大興奮)

以前「奇術師」のところで、いかさま師のことをかなり蔑んだ言い方をしていましたが、まさか同じ人物(つまりウェイト)とは思えないくらい、一見真逆のことを言っているように見えますよね。

もちろん内容はまるで異なるのですが、一世一代の勝負事なら、いかさまをしても勝たなくてはならない……なるほど、確かに正義を超越するには必要なことなのかも知れませんね。

これを聞いて、これまで私自身が「え?ちょっとそれはどうなの?」と、ウェイトに感じていたことが少しだけ和らいだ気がします。(笑)

もちろん、それを良しとするかどうかはまた別の話かと思いますが、ウェイトは、ずっと〝超越的な正義〟を行動で示していたのかも知れませんね。

三文目:神か無か――ウェイトが突きつける究極の真理

最後は〝The axiom is Aut Deus, aut nihil.〟です。

短い文章ですが、少し補足が必要そうなので、解説を交えながら進めていきたいと思います。

まず〝The axiom〟ですが、こちらは「その真理は」というような意味かと思います。

〝axiom〟には「公理」「基本原理/真理」「格言」など様々な意味があります。

どれも似て非なるものだと感じたので、試しに複数のAIに尋ねてみましたが、回答はばらばらでした。解説文を読んでもどれも的を射ていて、総合的に「真理」であれば、どの意味の要素も含まれていると思ったので「真理」にしました。「真理」とするとウェイトっぽさもありますしね。

続く〝Aut Deus, aut nihil〟ですが、こちらはラテン語です。「アウト デウス、アウト ニヒル」というような読み方だそうです(そのままでしたね)。

そして…

  • aut:~か、あるいは~か
  • deus:神
  • nihil:無、虚無、ゼロ

という意味で、「神か無か」という訳になります。

短い文章ですが、とても力強く、重たい文章だなと思いました。

〝The axiom is Aut Deus, aut nihil.

→ その真理は神、あるいは無か

このような意味になるかと思います。

ある意味『神以外は無』とも言え、〝all or nothing〟や〝0:100〟という世界観に近いのかなと思います。

では、まとめに入りたいと思います。

まとめ

改めて、今回取り上げた文章をご紹介します。

(a) Transcendental Justice, the counter-equilibrium of the scales, when they have been overweighted so that they dip heavily on the side of God.
The corresponding counsel is to use loaded dice when you play for high stakes with Diabolus.
The axiom is Aut Deus, aut nihil.

Arthur Edward Waite
『The Pictorial Key to the Tarot』より

また、これまでの流れも把握できた方がわかりやすいと思うので、前回の結論もお伝えしておきます。

エリファス・レヴィはこのカードに〝思慮〟を割り当てたが、それは、そうでもしなければ象徴体系の中に生じてしまったであろう欠落を埋めたいという願望に突き動かされていたのである。
四つの枢要徳は大アルカナのような思想体系の連なりにおいて必要不可欠であるが、今日の半ペニーほどの通俗的な報道紙において〝一般大衆〟と呼ばれる人々の便宜や慰めのために存在する第一義的な意味を、その意味だけで受け取ってはならない。
これらを本来の意味で理解するのであれば、それらは同様に再表現された〝完全さへの助言〟に対応するものであり、それらは次のように読み解くべきである。

そして、今回のこれまでの訳です(多少不自然でも、なるべく原文に手を加えずダイレクトに訳したものになります)。

→ (a)超越的な正義、それは天秤の逆均衡であり、それらに過剰な重みが加えられた時、それらが神の側へぐっと沈み込む。

→ それに対応する助言は、あなたが悪魔相手に大きな賭けをする時に、いかさまのサイコロを使うことである。

→ その真理は神、あるいは無か

最後に、本文の内容をより忠実に整えた(当サイト比)訳がこちらです。

(a)超越的な正義、それは天秤が神の側へ大きく傾き、深く沈み込んだ時のアンバランスな状態である。
それに対応する助言は――あなたが悪魔相手に一世一代の大勝負をする時には、いかさまのサイコロすら使え――ということである。
その真理は〝神か、さもなくば無か〟である。

このような形に仕上げました。

最初は「逆均衡」のままでも良いと思ったのですが、「アンバランス」とした方がもっとイメージしやすいかと思い、そのようにしました。

いかがでしょう?

みなさんは、この文章を見てどのように感じられましたでしょうか。

やるかやらないかは別として、(自分の)〝正義〟を貫くのって大変ですよね……。

私なりかも知れませんが、わかるような気がします。

〝Transcendental Justice(超越的な正義)〟をイメージした画像
〝Transcendental Justice(超越的な正義)〟のイメージ

では、今回はここまでになります。

いつも、ありがとうございます。

また次回(まだまだ「隠者」は続きます)。

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